オリックスは「もう地味と言われない」 愛する古巣へ…吉田正尚がファンに託す“願い”

「みんなを頼みました」海を渡っても古巣に注目

 日本一になり、注目度も上がった。「印象、変わったんじゃないですか? もう、地味とか言われていないと思う」。年末年始には地元の福井県に帰省。故郷にもオリックスファンが増えたという。「興味を持ってくれる人が多くなってきた。応援してくれる人が出てきた。今、周りの選手たちも『オリックス良いね!』って言ってくれる。FA移籍で(西武から)森選手も来てくれた。魅力あるチームに成長を遂げてきた証じゃないですかね」。奮闘し続けてきたヒットマンの言葉に、胸を打つものがある。

 海を渡っても「やっぱり、見ると思いますよ。気になるから。後輩たちの活躍も楽しみなので」と日本野球の情報を仕入れる。「今年ソフトバンクの補強がすごいですね。8、9回はモイネロ、オスナ?」とふと口にし、表情を緩ませる。盤石リリーフ陣が並んでも「僕はオスナ(の打席)に立ったことがない。1度やってみたかった」と笑みを浮かべるのだから、格が違う。

 オリックス在籍時も「対戦成績を見てもらえれば、わかると思う」と、メッツに移籍した千賀(ソフトバンク)、高橋(西武)らエース級の投手から打ちまくった。なぜ、エース級に強いのか……。そう訪ねると即答する。

「コントロールが良いからね。エースと呼ばれる投手たちの球は(軌道の)想像がしやすい。そこに絶対くる。イメージを膨らませて、強いコンタクトを心がける。その一瞬が面白くてたまらない。その繰り返しです」

 国際大会でも、世界に羽ばたいても磨いた打撃力は問題なさそうだった。最後には、こう切り出した。「これまで応援してくれた人に伝えたいことがあるんです……」。少しうなずくと、続ける。「僕がいなくなっても……応援お願いします。オリックスのみんなを頼みました」。クールな男から愛情溢れるワードが飛び出した。ユニホームが紺色から赤色に変わっても“B7”は追われ続ける。そう確信した言葉だった。

○著者プロフィール
真柴健(ましば・けん)1994年、大阪府・池田市生まれ。京都産業大学卒業後の2017年、日刊スポーツ新聞社に入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間、爆速で「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年2月からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY