大谷翔平に「教わってもダメ」 侍Jで「病んでた」山川に寄り添った戦友の気遣い

オリックスとの強化試合で快音を響かせた侍ジャパン・山川穂高【写真:荒川祐史】
オリックスとの強化試合で快音を響かせた侍ジャパン・山川穂高【写真:荒川祐史】

「ヒットが1本出る前なら振っていた」フォークを見極め四球

 6回には阿部翔太投手に対し、フルカウントから四球。「ヒットが1本出る前だったら、最後のフォークを振っていたと思います。1本出ていたからこそ、冷静に見逃せた」と自ら解説してみせた。8回は先頭で小木田敦也投手のスプリットが真ん中に来たところをとらえ、左翼席へ運んだ。ヒット1本から状態が上がり「流れが切り替われば、ホームランも出る。そんなもんなのかなと思いました」と感慨深げに振り返った。

 今季は村上宗隆内野手(ヤクルト)のバットを参考に、自身のバットをこれまでより20グラム軽い900グラムに替えていたが、壮行試合での不振を受け、急きょ昨年の物に戻す決断をした。前日は練習用の白い920グラムで2打席2三振だったが、この日は黒い試合用が届き、不振のトンネルを抜けた。「明らかに(昨年までの方が)フィーリングがいい。変えなきゃよかったとも思うけれど、トライしたことは良かった」と山川は振り返った。

 前日、大谷の2打席連続弾を目の当たりにし「野球をやめたくなった」とまで口にした。この日は快音を響かせ「野球をやめなくてよかった。僕は僕。求められることを精一杯やっていきます」と思い直した。

 ヒットが出ない長距離砲の目には、大谷の打棒も焦りを誘う現象でしかなかったが、これで気分はガラリと替わった。9日には本番の「カーネクスト 2023 WORLD BASEBALL CLASSIC 東京プール」1次ラウンド初戦の中国戦を迎える。山川は「大会になれば、自分が打つ打たないは関係ない。勝てば何でもいい」と気合を入れ直す。繊細な心を持つムードメーカーに笑顔が戻ったこと自体、侍ジャパンにとって大きな戦力アップだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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