大谷翔平が放った“一生に一度”の本塁打 WBCのヒーローインタビューの重圧

豪州戦で一発を放った侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】
豪州戦で一発を放った侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】

大谷は「子どもの頃からずっと夢見ていた」「いい景色でした」

 大谷にとって特別な一本だったはずに違いない。そこが質問への糸口となった。どのような気持ちでボールを見つめていたのか。その記念すべき本塁打について聞くと大谷は「子どもの頃からずっと夢見ていた」「いい景色でした」と話した。この言葉をほとんどのメディアが記事に使用した。いい言葉が引き出された。

 だが、大仕事を終えた三上アナからは反省の言葉が口をついた。

「子どもの頃からの夢だった、という言葉に私自身が聞き入ってしまいました。大谷選手にとってWBCが特別な存在だったことが感慨深くて……。あの試合で子どもの頃からの夢を実現したわけじゃないですか。でも、感慨に浸っているのではなく、もっと続けて聞くべきことがあったのじゃないかなと思っています」

 大谷少年がそうだったように、子どもたちが「自分もいつかこの舞台に立ちたい」「僕も世界一になりたい」と思えるような言葉をもっと引き出せたのではないか――。今も自問自答している。

「WBCの影響力が大きかったので、大谷選手の言葉を聞いて喜んでくれたファンが多くいたのはよかったかなと思います。『いい景色』も大谷選手にしか見られない究極の光景ですが、僕はどちらかというと、子どもの頃からの夢だったその舞台に立てていることの方がすごいと思いました。それを大谷選手が実現した瞬間だったので、大谷選手だから言える子どもたちへのメッセージを聞けばよかったと後悔しています」

 録画を見返すと悔しさが募る。ただ、ヒーローインタビューはファンを喜ばせ、思い出に残ればいいのではないだろうか。その後のファンの声援の大きさについて「まぁまぁでした」と観客を煽ったコメントも東京ドームは沸いた。三上アナは自責の念にかられていたが、大谷が活躍する世界があるならば、子どもたちへ伝えたいメッセージは届けることも可能だ。

 誰もあっと驚かす大谷の挑戦と活躍は、周りの人間にとっても挑戦と成長でもあるのだ。まだまだ楽しみは無限に広がる。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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