言葉で選手に恥をかかせない“操縦術” 人柄で侍J束ねた栗山英樹監督の「凄み」

侍ジャパンをWBC優勝に導いた栗山英樹監督【写真:Getty Images】
侍ジャパンをWBC優勝に導いた栗山英樹監督【写真:Getty Images】

栗山監督だから集結したタレント軍団…キャンプから見てきた指揮官の姿

 侍ジャパンの栗山英樹監督は、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝を成し遂げ、世界一の選手たちの手で10度宙を舞った。2006年の第1回大会で優勝した王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)、2009年に第2大会を制した原辰徳監督(現巨人監督)、あるいは2008年北京五輪で日本代表を率いた故・星野仙一監督らが、現役時代の実績や強烈なカリスマ性で選手を束ねていたのとは、全くタイプを異にする指揮官だった。

 ダルビッシュ有投手(パドレス)は2月の宮崎キャンプ終盤、栗山監督について「年下の自分が言うのはおかしいですが、(選手の操縦が)凄く上手だなと」と語った。「出るべきところは出る、引くところは引く。ずっと発言を見ていても、人を傷つけるとか、恥をさらすようなことは言わない。日本の指導者には、こういう人はあまりいないと思います」と続け、「自分はそういうところに、凄みを感じます」と感嘆していた。

 確かに、2月17日に宮崎でキャンプインしてから優勝を決めるまで、栗山監督が選手を“ディスる”言葉を1度も聞かなかった。その代わり、チーム状態が上向かない時にも「信じている」という言葉を多用していた。

 山川穂高内野手(西武)は「僕は過去に栗山さんと同じチームで戦った経験はありませんが、栗山さんの人柄であれだけの豪華なメンバーが集まったのだろうと感じました。今回は、ダルビッシュさんがキャンプ初日から参加してチームに和をもたらしてくれて、大会前には翔平(大谷翔平投手・エンゼルス)が合流して勢いをもたらしてくれましたが、その始まりは栗山さんだったのではないでしょうか」と言う。

 実際、栗山監督は昨年8月に米国を約10日間視察した時、米国球界に在籍する日本人選手全員とコンタクトを取り、特にダルビッシュについては「僕が日本ハムの監督に就任した2011年オフに、ダルはメジャーへ移籍しているので、一緒に戦った経験はない。でも、就任に際して僕が日本ハムの全選手と行った個人面談には、ダルも応じてくれたし、それ以前から評論家時代の取材でつながりはあった。僕のとしてはこだわりのある選手です」と招集に並々ならぬ意欲をうかがわせていた。当時からチームづくりの軸になる選手と踏んでいたのだろう。

準決勝で村上のサヨナラ打引き出した言葉の“絶妙なタイミング”

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