背番号「48」で無双「自分以外に喜んでくれる人が」 西武・今井“脱皮”の理由
「チーム全員が、150球を超えてもあいつは大丈夫と思っている」
「いいえ、替えないです。ポランコ選手を出塁させたとしても、まだ今井です」。松井稼頭央監督は試合後の会見で、「仮にポランコを歩かせて満塁となっていたら、交代させていたか?」と聞かれ、少し語気を強めてそう答えた。勝敗を今井に託したという覚悟がにじみ出ていた。今井自身も「中8日での登板でしたし、チーム全員が『150球を超えても、あいつは大丈夫』と思っているので」と頼もしかった。
栃木・作新学院高時代には3年夏に甲子園優勝投手となり、ドラフト1位の鳴り物入りでプロ入りしたが、昨年までの6年間は通算28勝27敗。開幕ローテ入りが決まっていた昨年、オープン戦終盤に右内転筋の張りを訴え、さらに2軍で左足首も痛めて、1軍登板は7月にずれ込んだ。8月下旬にも発熱で再び戦列を離れ、1か月間離脱。もどかしさは誰よりも本人が感じていた。
シーズンオフに球団へ直訴し、入団時から付けてきた背番号11を返上。昨年限りで現役を引退した先輩の武隈祥太氏(現球団バイオメカニクス兼若獅子寮副寮長)の「48」を継承した。「練習中に武隈さんと会うことがありますが、毎回うれしそうな顔でしゃべってくれる。1勝でも多く挙げることができれば、自分以外に喜んでくれる人が増えるので、そこは去年以上にやりがいを感じています」と口元を綻ばせる。今井が伸び悩みながら求めていたきっかけ、モチベーションがそこにあった。背番号変更後、いまだ無失点だ。
刺激は他にもある。一昨年まで4年連続でチーム防御率がリーグワーストだった西武投手陣だが、昨年一気にトップの2.75に躍進。今季も13日現在、エースの高橋光成投手が2試合1勝0敗、計16イニング1失点。平良海馬投手は2試合1勝0敗、13イニング3失点。松本航投手も1試合1勝、6回無失点で、今井と年齢の近い先発投手がそろって好調である。松井監督は「投手陣内に競争意識があり、今井も今日は最後まで投げ切りたかったのではないでしょうか」と推察。今井自身「ウチにはいい先発投手がいるので、負けないように頑張りたいな、と思います」とうなずく。
「今年は『これを信じて貫き通りてやっていけば大丈夫』というものが1つ見つかった。それさえできていれば、相手どうこうでなく、いい投球ができると思う」と自信をほのめかす今井。この男が実力を発揮すれば、ノーヒットノーランのチャンスなど、今後何度でも訪れるはずだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)