全国中継でマウンドへなぜか猛ダッシュ 目立ちまくったプロ初勝利…闘将との深い“縁”|球界群像 鈴木孝政#8

元中日の鈴木孝政氏【写真:共同通信社】元中日の鈴木孝政氏【写真:共同通信社】

鈴木孝政氏のプロ初先発、初勝利、初セーブに全て星野仙一氏が絡んだ

 150キロを超える快速球で知られた元中日投手の鈴木孝政氏(中日OB会長)のプロ初勝利は1974年8月7日の巨人戦(中日球場)だった。1-3の6回から2番手で登板して3イニングを無失点。その間に味方が逆転して5-3で勝ち、記念すべき初白星をつかんだ。初セーブは同年8月18日の阪神戦(中日球場)。それより前になるが、プロ初先発は同年6月9日の広島戦(福井)だった。実はこの3つの「初」には鈴木氏にとって共通の“関係者”がいる。星野仙一氏だ。

 試合前に憧れの巨人・長嶋茂雄氏にサインをもらった8月7日の巨人戦で鈴木氏はメモリアルのプロ初勝利をマークした。「その日は俺のおばあさん(鈴木たかさん)の命日だったからね。ジーンと来たね。引き合わせって絶対あると思った」。まさに思い出の1勝になった。その試合で最後の9回1イニングを2三振を含む打者3人でピシャリと抑えてくれたのが星野氏だ。ゲームセットの瞬間、鈴木氏は一目散にマウンドの星野氏のところまで走っていったという。

「仙さんにお礼を言いにすっ飛んでいった。これは高木時さん(高木時夫捕手兼コーチ)に言われた。ダッシュで行ってこいって。マウンドまで行ったから目立ったよね。巨人戦だったから全国ネットでね。みんなに知らせることができた。他のカードじゃできなかった。これもラッキーだったよね」

 プロ初セーブをマークした8月18日の阪神戦は、5-4の8回から登板して2イニングを打者6人で封じた。その試合の勝利投手で、先発していたのが星野氏だった。そして鈴木氏のプロ初先発の時の話にも星野氏が登場する。

「俺でいいんですか」星野氏と入れ替わる立場で中日の抑えに

「福井の広島戦だったけど、試合前に仙さんが『いいか、ここはな、俺の初勝利の球場なんだ。ゲンがいいから飛ばして行け!』って応援してくれたんだよ」。星野氏は1969年5月5日の広島戦(福井)で6回2/3を1失点、見事にプロ初先発、初勝利をマークしていた。

 鈴木氏も勝てば全く同じケースになる。だからこそ、そんな後輩のチャンスに星野氏も力が入ったのだろう。だが「プレーボールの初球、トップバッターにホームランを打たれちゃった。ポール際、切れろ、切れろって思っていたら、カーンってポールに。すごい音がした。のど自慢みたいな鐘の音がした。これも印象に残っているね。初先発、初球ホームランだったもん」。星野氏のゲキもむなしく、4回3失点で敗戦投手。「でも、それで覚えちゃった。福井が仙さんの初勝利の球場ってことをね」。

 今でこそ、笑い話になっているが、当時はどうだっただろうか。鈴木氏にとって星野氏は、この先の野球人生にも大きく絡んでくる。「4年目に抑えになる時もコーチに『星野を頭(先発)に持って行くから、お前がケツ(抑え)をやれ』って言われた。『俺でいいんですか』って気持ちだったけど、それからプロ野球選手の生活が始まったって感じだったね」。さらには指揮官と選手の関係としても、縁が続いた。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜鈴木孝政編〜

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