「私は志が低かった」松井秀喜が感じた大谷翔平との差 驚いた“規格外”のプロ意識

「第123回日本外科学会定期学術集会」に出席した松井秀喜氏【写真:荒川祐史】
「第123回日本外科学会定期学術集会」に出席した松井秀喜氏【写真:荒川祐史】

松井秀喜氏が「嘘でしょ?」と耳を疑った出来事とは?

 また大きな“武器”となったのは長嶋茂雄巨人終身名誉監督との素振りの時間だった。ミスターがスイングの音で“良し悪し”を判断するのは野球界で有名な話だが、なかなかこの技術を習得できる人は少ない。音の違いを聞く回数、どのようなサンプルがあるのかを知らなければ違いがわからない。

「聴覚でスイングを判断できるのは大きな武器になりました。ボールを投げてもらわなくても、自分1人で判断できるわけですから。試合前や家、ホテルでも毎日やりました。アメリカでは素振りという文化がなかったので、私にとっての長所、スイングの判断基準になりました」

 長嶋名誉監督とは巨人時代“4番・1000日計画”として、監督が付きっきりでスイングのチェックをした。予定では1993年から3年で終わるはずだったが、松井氏が巨人に在籍していた2002年まで続いた。その間、いきなり電話で呼び出され、ミスターが泊まっているホテルにバットだけを持って向かうこともあった。「油断していると電話がくる。ホテルにバット2本持って入るのは、野球選手ですが恥ずかしかったです」と笑う。

 それだけでは終わらなかった――。

「ヤンキース行ってからも監督との素振りは続きました。監督がニューヨークにいらしたとき、有名な5番街のプラザホテルに宿泊されていた。そこで『バット持ってこい』となった。嘘でしょ……って思いました(笑)。ヤンキースの選手でバットだけ持ってホテルに入った人、初めてだと思いますよ」

 ジョークを交えながら、エピソードを披露したが、ミスターへの感謝の思いも忘れることはなかった。松井氏は今、米国でヤンキースのマイナーでコーチをしている。指導者の立場になり「教えるのは難しい。自分の知識や経験を100%伝えられる武器が欲しいですね」としんみりと語った。

 松井氏はメジャー移籍の際「ヤンキースの一員として、ワールドシリーズでチャンピオンになりたい」と胸に抱き、渡米した。2009年にその夢が実現し、MVPになるなど、その功績は色褪せることはない。ただ「今の選手たちから比べると志が低かったかなぁ。大谷選手を見ていると……」と今をときめく大谷翔平の名を口にした。

大谷は「ハンサム」「どこのユニホームでも似合う。僕の場合は限られている」

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