巨人浅野がデビュー戦で示したスター性 監督も相手投手も絶賛…貫いたフルスイング

DeNA戦に出場した巨人・浅野翔吾【写真:小林靖】
DeNA戦に出場した巨人・浅野翔吾【写真:小林靖】

6回に代打で登場しDeNA田中健二朗の速球に空振り三振

■巨人 6ー0 DeNA(8日・東京ドーム)

 巨人のドラフト1位ルーキー・浅野翔吾外野手が8日、本拠地・東京ドームで1軍デビュー。6回に代打で登場し、そのまま右翼守備に就いた。2打席2三振を喫し、守備では人工芝に足をとられ前のめりに転倒するシーンがあったが、その一挙手一投足に4万826人の観客から歓声と拍手が沸き起こり、原辰徳監督も、この日先発して今季2勝目を挙げた菅野智之投手も、相手投手も賛辞とエールを送った。

 巨人が6-0とリードして迎えた6回。先頭の梶谷隆幸外野手に代わり「代打・浅野」が場内アナウンスで告げられると、スタンドからどよめきが起こり、やがて大歓声に変わった。マウンドにはDeNA2番手の左腕・田中健二朗投手がいた。

 右打席に立った浅野は、初球の内角に食い込んでくる140キロ速球を見送り、ストライク。2球目には、内角低めの142キロにバットをへ折られファウル。カウント1-2となった後、5球目の外角低めの142キロ速球にバットが空を切り、三振に倒れた。それでも渾身のフルスイングに、スタンドから拍手が送られる。そのまま右翼守備に就き、8回2死一塁で2度目の打席に立ったが、左腕・石川達也投手の前にまたもや空振り三振に終わった。

「ちょっと力んでいた部分があったので、次はもっと冷静にフルスイングしたいなと思います」。浅野自身はそう振り返ったが、2打席計9球のデビュー戦で、ストライクを見逃したのは1打席目の初球だけ。空振りが3球、ファウルが3球、ボールが2球。中途半端なハーフスイングはなく、フルスイングを貫いた。

 原監督は「しっかりと振れている部分ではね(評価できる)」とうなずき、「彼の野球人生は今日スタートしたわけで、生涯忘れることができない2打席であり、ゲームであったと思う。それを糧として、これから先どんな荒波が来ようとも、しっかり立ち向かってもらいたい」と期待を寄せる。菅野も「いやもう、本当に物怖じしていない。ああいう場面でフルスイングというのは、迷いなどがあって、なかなかできるものではない。そういう意味ではスケールの大きさというか、並大抵じゃないなと思いました」と、18歳の度胸に舌を巻いた。

「思い切りのいいスイングをしてくるし、18歳であの体はなかなかない」

「今すぐかどうかはわかりませんが、将来必ずいい選手になるのではないかと思います」。こう高く評価したのは、1打席目の対戦相手の田中健だ。内角をえぐるストレート2球で追い込み、フォークでタイミングを外してファウルを打たせた後、外角低めの速球で仕留める完璧な配球。プロのレベルを見せつけた格好だが、「僕はファームでも対戦がありましたが、思い切りのいいスイングをしてきますし、いい体をしている。18歳であの体はなかなかないと思います」。171センチ、86キロの筋骨隆々としたボディに着目していた。

 最も印象的なシーンとなったのは、むしろ7回の守備だろう。1死走者なしで、宮崎敏郎内野手が右中間へ放ったライナーに反応した瞬間、人工芝に足を取られ、前のめりにバッタリ倒れた。記録は二塁打。菅野が試合後にお立ち台で放った「(バックの野手陣は)本当によく打ってくれましたけれど、浅野は守ってくれませんでした」というジョークとともに、長く語り継がれることになるかもしれない。原監督も「僕はたまたま、あの時は目をつぶっていて見えなかった。ですから、言われてもわかりません。見えなかった、というところですね」と“名言”を吐いた。

 浅野自身、「菅野さんには申し訳ないんですけれど、あれ以上に恥ずかしいことは、たぶんこれからないと思います」と言いつつ、落ち込んだ様子はなかった。「スタンドのファンから『大丈夫だよ』と言われました。ファンの人も優しい人が多いと思ったので、これから活躍して喜んでもらうようにしたいです」と前向きだった。

 日本プロ野球史上最高のスターである長嶋茂雄氏のデビュー戦が、オールフルスイングの4打席4三振だったことはよく知られているが、浅野は守備でも、期せずして人々の心に残るシーンの“おまけ”を付けた。あふれるスター性を感じさせ、今後へ向けては期待感しかない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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