「身内はだいぶ騒がしい」激レア“兄弟同日勝利” 翌日には母校に吉報…変則右腕の原点

西武・與座海人【写真:荒川祐史】
西武・與座海人【写真:荒川祐史】

パナソニックのエースで兄の健人はJR西日本を完封した

 夏は野球が盛りだくさんだ。西武のサブマリン・與座海人投手は15日、本拠地・ベルーナドームで行われた日本ハム戦に先発し、7回4安打無失点の快投。勝利投手にはなり損ねたが、チームの勝利に貢献した。社会人野球のパナソニックでエースを務める2歳上の兄・健人投手も同日、東京ドームで開催中の都市対抗野球1回戦のJR西日本戦に先発し、9回6安打無失点で完封勝利。さらに一夜明けた16日には、兄弟の母校である沖縄尚学高が、夏の甲子園出場を決めた。

 先陣を切ったのは、兄の方だった。パナソニックの健人は15日午前10時開始のJR西日本戦に先発。9回を128球で6安打無失点に封じ、チームを3-0の勝利に導いた。

 これをうけて「家族でつくっているグループLINEで、兄に『ナイスピッチ』と伝えました」と言う弟は、午後6時開始の日本ハム戦で先発マウンドに上がる。相手の先発でエース格の上沢直之投手を向こうに回し、両チーム無得点の投げ合いを展開した。5回1死二、三塁のピンチでは、清宮幸太郎内野手をカウント3-0から、内角の125キロのストレートで捕邪飛に仕留め、続く万波中正外野手も106キロのカーブで右飛に打ち取り、1点たりとも許さない。「清宮選手は素晴らしい打者で、カウント3-0から一発狙って思い切り振ってくるところでしたから、しっかり覚悟を決めてインコースを突けたのがよかったと思います」とうなずいた。

 結局、試合は0-0のまま、與座は7回、上沢は8回限りで降板。西武が9回、中村剛也内野手が相手の2番手・池田隆英投手から適時二塁打を放ち、サヨナラ勝ちを収めた。與座に白星がつかず今季初勝利を逃したのは気の毒だが、本人は「1点勝負になることは、相手投手を見ればわかっていました。野手の方はしっかり守ってくれますし、なんとか工夫して点を取ってやろうという気持ちも伝わってくる。チームで勝っていくだけなので、ああいう最高の形をつくれてよかったです」と屈託がなかった。

「ターニングポイントになった」母校は全国一番乗りで甲子園切符を掴んだ

 都市対抗での健人の活躍については、「兄があれだけ大きな舞台で先発するのは、なかなかなかったことですし、まさか僕がその日に投げるとは……身内はだいぶ騒がしくしています」と明かす。兄弟で同じ日に先発し、合計16イニングを無失点に抑える“快挙”を成し遂げたのだから、家族が盛り上がるのは当然だろう。「兄も頑張っているなあと思います。すごく刺激をうけました」と表情を引き締めた。

 翌16日には、高校野球沖縄大会決勝で母校の沖縄尚学がウェルネス沖縄を3-0で破り、今年の全国一番乗りで夏の甲子園切符を手にした。與座は「春季沖縄大会で(ウェルネスに)負けたと聞いていたので心配していましたが、よかったです」と先輩の顔をのぞかせる。

 自身の高校時代は2年生の夏に、現在も指揮を執る比嘉公也監督のアドバイスでオーバースローからサイドスローに転向。「自分のターニングポイントになったことは間違いない」と言う。3年生で春の選抜の1回戦に3番手投手として登板。夏はチームが甲子園出場を果たした中で、ベンチを温めたが、「技術、体力、取り組む姿勢を含めて、野球の土台をつくれた3年間だったと思っています」。岐阜経済大(現・岐阜協立大)進学後さらにアンダースローに変更し、プロの門を叩くことになったのも、この高校時代があればこそだ。

「自分に縁のあるチームが頑張っているので、すごく刺激になります」と笑顔を浮かべる與座海人。チームの勝利に対する執念は、兄や母校の後輩たちとつながっている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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