大失速の日本ハム「これじゃ変わらない」 OBが厳しい指摘…最下位転落で迫る“決断の時”

日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】
日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】

通算2012安打の田中幸雄氏が語る日本ハムの弱点「二遊間に固定した選手を」

 新庄剛志監督が就任して2年目の日本ハムは、35勝50敗の最下位に転落し球宴休みを迎えた。交流戦を勝ち越し、6月23日には借金を3まで減らしたものの、そこから急失速し前半戦の最後は10連敗。一時は視界に捉えていたAクラスも遠のいてしまった。チームOBで、通算2012安打を記録している田中幸雄氏は、ここまでの戦いを見た上で日本ハムの再建には「あと2、3年かかる」と厳しい見方。今後の戦い方をどうすべきか、また起爆剤となりうる選手の名前も挙げてくれた。

 日本ハムのチーム防御率はパ・リーグ1位の2.90。勝ち星を思うように伸ばせていない原因は、打線にあると田中氏は見ている。「接戦を落とすことが多いのも、打ち負けている気がします。昨年に比べたら選手個々は成長していると思います。でもレギュラーがまだ足りない。特に二遊間に、固定した選手をつくってほしいですね」と課題を挙げる。

 昨季は新庄剛志監督が開幕前に「1年間かけてのトライアウト」と宣言。実際に出場できる選手全員に1軍でのチャンスを与えた。そして新球場「エスコンフィールド北海道」が開業しての今季は「優勝しか目指しません」と口にしてのシーズン。田中氏はこの言葉に、選手たちもプレッシャーを感じているのではないかと指摘する。

「3年後に強くするという方針なら、これはという選手をレギュラーに固定して、多少結果が出なくても使い続けるという方法があります。試合の中で学べるものはそれほど大きいですから。でも目の前の試合を勝とうとすれば、そうはいかない。まだ経験が少なく、調子の波の激しい選手が多いので、その時の状態で変えざるを得ません。ファイターズくらい、スタメンが変わっているチームはないですよね」

 日替わりのスタメンには、選手が成長する機会が削がれるという側面もある。「試合に出たり出なかったりでは……。これじゃ変わらない。去年のトライアウトで見極めが済んだかと思えば、まだそこまで成長していない。1度強い世代ができればいいんですが、それにはあと2、3年かかるように思います」。あくまで今季の成績を追うのか、それとも来年以降を見据えるのか、決断の時期は迫っている。

 新庄監督の一見奇抜な作戦も、苦肉の策なのではないかと見ている。6月24日のロッテ戦では、打席の石井一成内野手に1打席で2度スクイズのサインを出し、共に失敗ということがあった。ロッテのベンチに、昨年まで日本ハムにいた金子誠コーチがいたこともあるのかもしれないが、焦りを見抜かれていた。

「普通にやっていては得点の確率が低いと思うから、スクイズも重盗もやっているわけです。選手に任せて勝っていくのが一番ですが、できないから苦労していますよね。どんどん走らせていくのはいいと思います。点を取るには一つでも先の塁に進まないといけないので。ただその確実性を上げるのも、結局は経験だと思います」

日本ハムで活躍した田中幸雄氏【写真:小林靖】
日本ハムで活躍した田中幸雄氏【写真:小林靖】

二遊間のレギュラー候補が2軍にも「遊撃で使いたい」「ブンブン振れる」

 今季の日本ハムは、二塁を守った選手が11人。遊撃を守ったのも同じく11人いる。その中で、誰にレギュラー定着の可能性があるのか。今後を見据えても後半戦はレギュラー固定が望ましいとする田中氏は、今は2軍にいる2人の候補を挙げてくれた。

 1人は、2年目の水野達稀内野手だ。「しっかり振れるし、足も俊敏性もあって、内野手の動きをできている。僕なら遊撃で使いたい選手です」。現状のバッティングは粗さが目立つものの「まず全力で振り切れるものを持っていないと、プロのスピードにはついていけない」。確実性を増すための方法は、試合に出続け、経験を増やす中で探せるという。「どこかで常に全力じゃなく、力をうまく調節しながらできるようになるといいんじゃないですかね」とエールを送る。

 もう1人は、ルーキーの奈良間大己内野手。「キャンプから元気で、はつらつとしていてね。こっちも水野と同じで、センスがあってブンブン振れる」。何より、2軍で3割を超える打率(.338)を残しているのが可能性の証拠だ。「2軍で3割2分とか3分とか打っている選手は、上でも出続ければ打てるようになりますよ」。もちろん経験は必要だが、田中氏は日本を代表する名手の名を挙げて、今後の成長を期待する。「源田(壮亮=西武)だってそうですよ。試合を経験する中で振りが鋭くなり、攻守にスピードに対応できるようになったんです」。

 夏場になれば、どうしても投手がへばってくる。そこで勝ち星を伸ばすためには、やはり打線が鍵を握る。「今の成績には、もちろん清宮の怪我、野村の不調という要素もあります。万波と3人は、今のファイターズを引っ張っていかないといけない選手ですから」。その上で球宴に出場しない選手こそ、この数日間の使い方が大事になるという。

「後半戦に、どのくらい復調できるか。球宴の間にしっかり練習して、急に良くなることもあります。前半戦の反省や課題を、どこまで整理して、後半につなげられるかが大切だと思います」

 田中氏は現役時代、春先に好成績を残す打者だった。自身の長所と弱点を知ることも、年間で数字を残すコツだという。「自分で自分を知っておいてほしい。何が良くて、何が足りないのか」。残るシーズンでどこまで成長できるかは、チームの未来にも関わる。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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