白星逃すも「気持ちよく投げられた」 前田健太が取り戻した“自信と感覚”

マリナーズ戦に登板したツインズ・前田健太【写真:ロイター】
マリナーズ戦に登板したツインズ・前田健太【写真:ロイター】

降板後に逆転され3勝目はならず

■ツインズ 6ー3 マリナーズ(日本時間20日・シアトル)

 ツインズの前田健太投手が19日(日本時間20日)、敵地・シアトルでのマリナーズ戦に先発。6回1/3を投げ3安打2失点と好投し、今季自己最多タイの9奪三振を記録。しかし、継投した2番手投手が痛恨の2ランを被弾し、3勝目を手にすることはできなかった。【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫】

 結果は付いてこなかったが、この上ない手応えを掴み取った登板だった。

「今年いちばん良かったと思いますね。結果とかは別にして内容と感覚がすごく良かった。投げているボール自体もいちばん良かったと思います」

 球威のあるストレートと切れのある変化球を巧みに組み立てた。1回、先頭のクロフォードに中前打を許したが、2番ロドリゲスから打者15人を連続凡退に仕留める完璧な投球を見せた。

 ストレートは最速93.4マイル(約150キロ)。右肘のじん帯修復手術から1年7か月ぶりに復帰した今季の自己ベストを計測。スプリットも求めていた130キロ台後半のスピードが戻り5個の三振を奪った。制球も抜群だった。4回には、カウント3-0から立て直し、強打ロドリゲスを見逃し三振仕留めた。崩れる気配もなく、前田は7登板ぶりの無四球を記録した。

 悔やんだのは6回の1球だった。「完全に気を抜いた僕のミス」。油断した8番マーフィーに初球のスライダーを左翼へ運ばれ1点を献上。そして7回、1死からケレニックに左前打を許したところで降板となった。前回14日(同15日)の登板は3回限りで降板。そのときと同じ80球で7回途中までを投げ切った。

肘を気にする投球が続くも「いい感覚で気持ちよくピッチングができた」

 前田は、21年9月に受けたトミー・ジョン手術の影響で22年シーズンを全休した。1年以上に及ぶリハビリ生活を経て、復活を期した今季、4月4日の初登板で5回1失点の好投。しかし、2試合目で6回4失点と打ち込まれ、3試合目の登板は「全身の疲労」で回避。同下旬には右上腕三頭筋の張りを訴え15日間の負傷者リスト(IL)入りした。1か月後にはマイナーでリハビリ登板ができるまでに回復したが、メジャーでの復帰登板にはそこからさらに1か月を要した。メジャーのマウンドに再び戻ってきたのは、6月23日(同24日)のタイガース戦だった。

 万全な状態で復帰をしても全開で飛ばせるだけの自信はなかった。肘に張りが出ることを恐れ、球数と力の加減を常に気にするマウンドが続いていた。

「手術前だったら1試合100球を全力で投げてもあんまり不安はないんですけど、今は100球全力で投げたら序盤を抑えて、50球ぐらいは6割ぐらいで残り50球は100%でとか、いろいろ配分を考えたりしてたんですけど。でも、今日はあんまり配分を考えずに、最初のバッターの1球目から強く(腕を)振っていけた。登板後に違和感というか悪いものがない」

 イメージと合致したフォームに本来の感覚が伝わってきた。

「スピードが出てるんだけど、なんか気持ち悪いなとかじゃなくて。いい感覚で気持ちよくピッチングができた。腕の使い方とか下半身の使い方とかタイミングとか色々あるんですけど、それがうまくいったかなっていうところです。それが良かったなと思うんです」

 前田は、痛恨の2ランを被弾しうつむきながらベンチに戻ってくる2番手・ジャックスを待ち構え、肩をたたいた。ドジャース時代の経験から、中継ぎの難しさも知っている。白星は逃しても、次への意欲を強く掻き立てられた登板だった。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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