菊池雄星、苦しんだ3年間の“意味” 「全然、去年とは違う」逆算の配球に溢れた自信

マリナーズ戦に先発したブルージェイズ・菊池雄星【写真:Getty Images】
マリナーズ戦に先発したブルージェイズ・菊池雄星【写真:Getty Images】

収集したデータを活用して三振「ブレーキングボールにかなり積極的だと」

■マリナーズ 3ー2 Bジェイズ(日本時間22日・シアトル)

 ブルージェイズの菊池雄星投手が21日(日本時間22日)、敵地・シアトルで行われたマリナーズ戦に先発。1点リードの6回途中まで投げ5安打無失点8奪三振の好投を見せたが、粘投を続けていたリリーフ陣が、終盤の8回に同点とされて、メジャー自己最多となる8勝目を手にすることはできなかった。【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫】

 ブルージェイズ移籍後、古巣シアトルで初の登板を果たした。5回まで3度先頭打者に安打を許したが、点は与えなかった。意識したのは連打を許さないこと。

「いつも考えていることは、連打をさせない。(打者を)出しても次を取れば、最少失点でいける。先頭バッターが今日は多く出ましたけど、次のバッターをきちんとすることが今日はできたと思います」

 得点圏に唯一走者を出した2回、その強い意志で凌いでみせた。先頭で4番のテオスカー・ヘルナンデスに投ゴロ内野安打を許し、一死後には6番のタイ・フランスに中前に弾き返され1死一、二塁のピンチを背負った。この場面で右打席に迎えたのは被打率3割を超えるAJ・ポロックだった。

 収集したデータを活用した。

「ブレーキングボールにかなり積極的だというデータがあった。カーブは基本的にストライクゾーンに投げる球ではあるんですけど、彼に対してはストライクからボールになる球で最後は決めたかった」

 入り球から2球続けたカーブの後、スライダーファウルを打たせ追い込んだ。決め球は、意図的にショートバウンドさせたカーブだった。結果は空振り三振。相手が狙う球種をバットコントロールが利かない場所へ投げ込む。ただ、データに沿っただけではない。菊池は仕留める直前に、外角高めのボールゾーンにあえて直球を見せて、最後のショートバウンドを活かす布石を敷いた。

苦しんだシアトルの地で“構築的な逆算の配球”を成立させた

 マリナーズ時代の2年目に磨いた高めボールゾーンへの直球が、苦しんだシアトルの地で“構築的な逆算の配球”を成立させた。

 菊池は言った。

「投球フォームとの葛藤というか悩みがあった期間も長かったので。苦しいというか、悩んでいた時期の引き出しがすごく今、有効に使えているかなと思います」

 19年から3年間在籍したマリナーズで、昨年に移籍したブルージェイズで、菊池は毎年フォームを変えてきたが、今季に導入されたピッチクロック(投球間隔の時間制限)の影響もあり、テークバックを小さくするなど投球の一連の動作には新たな変化が見て取れる。

 テンポは格段によくなった。ただ、見逃しがちな小さな工夫もある。菊池は、自軍の攻撃が終わると、小走りでマウンドに向かう。先頭打者を迎える前からリズムを作り投球練習に入っていく。

 6回に先頭のフリオ・ロドリゲスからこの日8個目の三振を奪い、次打者に投ゴロ内野安打を許すと、ベンチからシュナイダー監督がマウンドへ。78球での降板。前回登板に続き、菊池の表情には一瞬、続投への感情が露わになった。

「全然、去年とは違う」――。地元メディアに向けた最後の言葉は自信に満ち溢れていた。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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