「ヨコが運んでくれた」 虎の主砲がもらった見えない力…天国の後輩へ捧げた“弔い弾”

阪神・大山悠輔【写真:荒川祐史】
阪神・大山悠輔【写真:荒川祐史】

阪神・岡田監督も「特別なゲームだったんで。1点負けててもブルペンいく言うてた」

■阪神 4ー2 巨人(25日・甲子園)

 阪神は25日、甲子園で行われた巨人との伝統の一戦を4-2で勝利した。4番・大山悠輔内野手が11号逆転2ランを含む3打点と大暴れ。18日に亡くなった球団OB・横田慎太郎さんの追悼試合を白星で飾り「ヨコがあそこまで運んでくれたホームラン」と、亡き球友の思いを背負い、天国へ勝利を届けた。

 負けられない試合で主砲のバットが火を噴いた。1点ビハインドの6回1死一塁。巨人・菅野が投じた136キロのフォークを拾い上げ左翼席へ11号逆転2ラン。ダイヤモンドを一周するとベンチ前でナインに迎え入れられた後、天に向けて両手でヘルメットを掲げた。

 打った瞬間は「レフトフライかな」と思ったという。それでも、高々と舞い上がった打球はスタンドに消えていった。「あそこまで伸びてくれたのはヨコが運んでくれたホームラン」。普段は冷静沈着な男。目に見えない力が打球に乗り移り「ありがとうという気持ちを持って」と、感謝の思いを伝えるためのベンチ前パフォーマンスだった。

 大山がルーキーイヤーだった2017年、横田さんは春季キャンプ中に脳腫瘍が発覚。その後は手術、リハビリの日々が続き1軍で共にプレーしたことはない。それでも、寮や私生活のなかで「大山さん、大山さんって近づいてきてくれていたので。そういうのも思い出した」と、可愛い後輩と過ごした日を振り返る。

 志半ばでこの世を去った友のためにも、自信とプライドを持ってこれからも試合に出場していく。「野球ができていることは当り前じゃない。もっともっとしっかりやらないと」。首位を走るチームの4番として、改めて気持ちを高ぶらせた。

 勝ち越した直後の7回には岩貞、そして9回は岩崎が無失点に抑える力投。横田さんと同期入団の2人は「もっと一緒に野球がしたかった」「今日は本当に勝てて良かった」と声を詰まらせていた。大きな1勝を手にした岡田監督も「特別なゲームだったんで。1点負けていても岩貞をいかすつもりやった」と、ビハインドの展開でも勝ちパターンの投手をつぎ込んでいたことを明かした。

 この日のウイニングボールは遺族のもとに渡った。監督、コーチ、選手、ファンが一体となって掴んだ白星。天国の横田さんに最高の報告をするため、これからも勝ち続けていく。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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