128球目に最速155キロ「ボールに乗り移った」 進化を証明する“完投の法則”

西武・高橋光成【写真:小林靖】
西武・高橋光成【写真:小林靖】

西武・高橋光成が自身初のシーズン複数完封「レベルアップできている証拠」

■西武 3ー0 ロッテ(25日・ベルーナドーム)

 驚異のタフネスだ。西武の高橋光成投手は25日、本拠地ベルーナドームで行われたロッテ戦に先発し、9回5安打1四球無失点の快投を見せた。前回16日・日本ハム戦(ベルーナドーム)に続き、自身初のシーズン複数完封を「2試合連続」で飾った。昨年と一昨年はゼロだった完投数も、今季は両リーグを通じ最多の「4」に上っている。

 山場は最後にやってきた。3-0とリードして迎えた9回1死二、三塁の“一発同点”のピンチを背負い、打順は今季12本塁打の4番グレゴリー・ポランコ外野手、5番の長距離砲・山口航輝外野手に回った。松井稼頭央監督は「行かせるのか、代えるのか、難しいところでしたが、点を取られるまでは光成かなと思いました」とエースに託した。

 ここから1段ギアを上げる。ポランコをカウント2-2から、高橋の代名詞である縦のスライダーで空振り三振に仕留めた。山口に対しては、カウント2-2から7球目(この日通算128球目)のストレートが内角低めに外れたものの、この日最速の155キロを計測。続く8球目のスライダーに山口のバットが空を切り、歓喜の雄たけびを上げた。「力が湧いてくる感覚があった。ファンの皆さんの力を借りて、それがボールに乗り移った感じです」と本拠地の大歓声に感謝した。

 自身3年ぶりの完封を果たした前回登板の日本ハム戦でも、120球目のラストボールが最速の154キロを計測。9回2失点完投勝利を挙げた4月23日・オリックス戦(京セラドーム大阪)でも、最後の125球目が自己最速の157キロを叩き出しており、完投の際に9回最後の打者への投球がMAXを記録するパターンが続いている。「僕自身レベルアップできている証拠。出力が上がり、ストライクゾーンで勝負できています」とうなずく。

 試合終了直後にチームメートから、まるでサヨナラ打を放った野手のように水をかけられた。ずぶぬれになりながら「これまでピッチャーにはなかったことですが、栗山(巧外野手)さんがやってくださった。これからちょっと流行るんじゃないかと、期待してます」と笑顔が弾けた。1人で試合を投げ切った投手に対する、新たな祝福の儀式となるかもしれない。

「マイティ・ソーになりたいのです」。高橋は、将来的なメジャー移籍の意志を初めて明かした昨年オフの契約更改交渉以降、何度かそう口にしている。米国の映画やゲームに登場するスーパーヒーローで、後ろ髪がなびくヘアスタイルも、それに寄せたものだ。破格のタフネスを見せつけたことで、マイティ・ソーにも一歩近づけただろうか。高橋は「完封して近づけるなら、無理しても投げます。……冗談ですけど!」といたずらっぽく笑った。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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