“蛮行”→退団から7年「理性を失ってしまった」　元助っ人、苦い教訓も忘れぬ日本愛

東京ヤクルトスワローズ
2023.08.11

元ヤクルトのオンドルセクは台湾の「統一ライオンズ」で前期優勝に貢献

　台湾プロ野球の前期シーズンを制した統一ライオンズ。優勝の立役者には元NPB選手もいる。2015年にヤクルトでセットアッパーとして活躍した「羅昂」ことローガン・オンドルセク投手だ。

　今年2月に38歳となった右腕はヤクルト退団後、米マイナーや独立リーグ、メキシカンリーグ、ドミニカウインターリーグなどを渡り歩いた。2017年には32歳でトミー・ジョン手術を受けるも、懸命なリハビリに励み復活。2019年、34歳にして先発に再転向し、メキシコやドミニカでの先発での実績が認められ、2022年1月に統一ライオンズ入りを果たした。

　初年度の昨季は開幕から6連勝、防御率1.70と好調で、チームの前期優勝争いに貢献した。ところが6月、ベースカバーの際に足裏の筋肉を痛め離脱。エースを失ったチームは前期優勝を逃した。その後、オンドルセクは9月に復帰し、最終的に9勝1敗、防御率1.87の成績を残した。

　今季の前期は、勝ち星こそ4勝5敗と伸び悩んだものの、12試合先発、投球回数79回1/3はいずれもチームトップ。防御率2.04はKBOに引き抜かれた同僚サンチェスに次ぐリーグ2位と、ローテーションの軸として活躍した。結果的には失敗に終わったものの、前期終盤には過去の経験を買われ、クローザーとしても起用された。

　オンドルセクについて語るならば、2016年シーズン中のヤクルト退団につながった味方野手のエラーをきっかけとしたダグアウトでの激高について避けるわけにはいかないだろう。この一件について問われたオンドルセクは「当時は勝ちたいという思いが強いがあまりに、一瞬、理性を失ってしまった」と誤りを認めている。勝利に対する強い意志は健在で、自身を「燃える野獣」と称する。

　成績はもちろん、チームの士気を高める重要な役回りを果たしている。NPB好きも多い台湾のファンに「守備コーチ」というあだ名をつけられるなど、人気も高い。

日本での生活で「思い返すのは素晴らしいことばかり」

――高温多湿の台湾は過酷な環境だと思いますが、好成績の秘訣は

「大切なのは、フィジカル面はもちろんですが、精神力の強さです。全てのピッチャーにとってタフな環境だと思いますし、特に夏はキツいですけど、相手投手も同じ条件で投げているわけで、それを言い訳にはできません。自分にそう言い聞かせて、ベストをつくす努力をしています。もちろん汗はかくので、アンダーシャツは何枚も取り替えないといけませんが」

――常に燃えたぎる闘志を感じます。38歳になった現在も闘志を持ち続けてプレーできているのはなぜでしょう

「野球が好きだからです。メジャーリーグ、マイナーリーグ、日本、台湾、メキシコなど、各国でプレーしてきましたが、マウンドに上がった時は、必ず最高の選手でありたい、最良のパフォーマンスを発揮したいと思ってプレーしています。ありのままの感情がむき出しになることがあります。ただ、日本での『教訓』を経て、マウンドを下りたらリラックスして自然の成り行きに任せるよう心がけています」

――台湾プロ野球で手強い打者を挙げるとすれば誰になりますか

「台湾プロ野球には長打力を持ちつつ、粘り強かったり、多くの球数を投げさせたりする打者が多いです。純粋なリーグトップクラスのパワーヒッターたちよりも、くさい球はファウルで逃げ、失投は仕留めてくるような打者が手強いですね。中信兄弟の王威晨選手、富邦の王正棠選手、味全の郭天信選手や李凱威選手などでしょうか」

――日本に対する思い出は

「さまざまな事柄がとても懐かしい。日本の野球、日本のファン、そして食べ物、風景、ひとつひとつに思い入れがあります。日本は、私と妻が一緒にアメリカ以外で暮らした初めての国でもあり、かけがえのない思い出があります。上の娘も日本での生活を気に入っていました。自分に、日本はどうだったのと聞いてくる人がいますが『99.9％、素晴らしかった』と答えていますよ。『教訓』」もありましたが、思い返すのは素晴らしいことばかりです。東京にはおいしいものがたくさんありましたね。ラーメンは特に忘れられないもののうちのひとつです」

――日本のファンへのメッセージを

「統一の試合を見に来てくれたら、ぜひ大声で応援してください。スワローズのファンが来てくれたらとてもうれしいですね。その際には、最高のパフォーマンスをお見せできるよう頑張ります」