「最近救援陣が少し不安な状況に…」 巨人原監督がつくった“名誉挽回”機会

投手交代を告げた巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】
投手交代を告げた巨人・原辰徳監督【写真:荒川祐史】

「リリーフなくしてペナントを戦うことは非常に難しい」

■巨人 5ー1 DeNA(12日・東京ドーム)

 巨人の山崎伊織投手は12日、本拠地・東京ドームで行われたDeNA戦に先発し、7回2/3、3安打無四死球1失点の快投で今季9勝目(3敗)を挙げ、チームの連敗を4で止めた。同僚で最多勝争い単独トップの戸郷翔征投手へ1勝差。いろいろな意味でチームへの貢献度の高い投球だった。

 3-1とリードして迎えた8回、2死走者なし。佐野恵太外野手が左打席に立ったが、この時点で投球数111の山崎伊には、まだ余力があるように見えた。しかし、原辰徳監督がベンチを出て、2番手の左腕・高梨雄平投手へスイッチ。山崎伊の3年目でのプロ初完投は、次回以降の登板へ持ち越された。本人も「ホームランがあって(7回に牧秀悟内野手に20号ソロを被弾)1点取られていたので……。ゼロでいっていたら投げさせてもらえたかもしれない。次は点を取られないように頑張ります」と、後ろ髪を引かれる思いがあったようだ。

 原監督は「総合的に見て、最近リリーフ陣が少し不安な状況になりつつあるという部分でね、ここはブルペン陣に託そうと伊織に伝え、(本人も)わかったというところでした」と事情を説明する。

 と言うのは、リリーフした高梨は8日の阪神戦で、1点ビハインドの8回に登板し、ルーキーの森下翔太外野手に致命的な2ランを浴びていた。10日の同カードでも、1点ビハインドの9回に原口文仁内野手に2ランされ、2試合連続の被弾。高梨は阪神戦となると、7月2日の対戦で近本光司外野手の右脇腹付近に死球を当て、その後骨折が判明して以降、登板するたびに激しいブーイングにさらされているだけに、巨人ベンチとしては一刻も早く次の登板機会を与え、気持ちを切り替えさせたかったのだろう。

 原監督は「高梨は非常に大事な投手ですが、ここのところ少し不安を感じているところがあったのでね。高梨だけじゃなく、リリーフなくしてペナントを戦うことは非常に難しいですから」とうなずき、「伊織がツーアウト・ランナーなしという形にしてくれたのでね。いいバトンを渡してくれたと思いますよ」とお膳立てした山崎伊を称えた。

DeNA戦に先発した巨人・山崎伊織【写真:荒川祐史】
DeNA戦に先発した巨人・山崎伊織【写真:荒川祐史】

「マツダのマウンドにはちょっと苦手意識を持っているようです」

 ベンチの思惑通り、高梨はわずか1球で佐野を二ゴロに仕留め、気持ちよく降板。9回はドラフト5位ルーキーの船迫大雅投手が3人で片付け、巨人の勝利は揺るがなかった。

 ともかく、5回までパーフェクトに抑える快投で試合の流れを引き寄せた山崎伊が、この勝利の最大の功労者であることに間違いはない。前回登板の5日・広島戦では、敵地マツダスタジアムで3回途中4失点KOされていた。今回への影響が心配されたが、原監督は「マツダのマウンドには、ちょっと苦手意識を持っているようです。そういう意味で、今日は良かったのではないでしょうか」と、本拠地での登板には不安がなかった。

 確かに、今季マツダスタジアムでは2試合先発して2敗、防御率7.56と打ち込まれているが、おそらくキャリアを重ねていけば解決されていくだろう。一方、勝手知ったる東京ドームでは、これで6試合3勝0敗、防御率2.48と安定した投球を続けている。

 山崎伊は「甘いボールがたくさんありましたし、牧選手のホームランも、ボールゾーンで空振りを狙ったフォークが(真ん中内寄りへ)抜けた失投でした」と唯一の失点シーンを反省。「次はああいうのがないようにして、最後までしっかり投げ切りたいと思います」と気合を入れ直した。先発ローテの軸の1人として、貫禄が漂い始めた。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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