活躍助っ人が激減…愛され3冠王が語る成功への“3か条”「スカウティングができてない」

インタビューに応じた元阪急のブーマー・ウェルズ氏【写真:舛元清香】
インタビューに応じた元阪急のブーマー・ウェルズ氏【写真:舛元清香】

元阪急のブーマー氏「私やバース、クロマティのような選手を探せていない」

 NPBから外国人スラッガーが消えて久しい。パ・リーグで30本以上の本塁打を放った外国人打者は、2019年のアルフレド・デスパイネ外野手(ソフトバンク=36本)が最後。規定打席以上の3割打者となると、実に2014年の李大浩内野手(ソフトバンク=打率.300)までさかのぼる。1984年に外国人選手として初の3冠王に輝き、その後は外国人選手の代理人も務めたことがあるブーマー・ウェルズ氏は、この現象をどう見ているのだろうか。【取材協力・一般社団法人日本プロ野球外国人OB選手会】

「活躍できる条件に合う選手がいなくなったわけではないと思います。探せていないだけではないでしょうか。私やランディ(=バース、元阪神)、クロマティ(元巨人)のような選手をスカウティングできていない」

 ブーマー氏は引退後に代理人業を始め、日本ハムで本塁打王2度、打点王にもなったナイジェル・ウィルソンを日本に送り込んだ実績もある。自身のグラウンド内外での経験から、成功できる助っ人の条件をどう考えているのだろうか。

「一つは打撃力です。外国人選手には一番求められますから。あとは日本でプレーするためのメンタルですね。ハングリー精神、日本で何が何でも成功してやろうという気持ちが必要でしょう。日本野球に対する態度も大切だと思います」

 自身も、決して望んで阪急入りしたわけではない。「自分に関する権利をツインズが阪急に売ったので、仕方なく」と正直な思いを口にする。一方で「来たからには、ファンにいいプレーヤーだと認められたかった」。日本の野球を研究することで、10年間に渡って安定した成績を残し続けた。

インタビューに応じた元阪急のブーマー・ウェルズ氏【写真:舛元清香】
インタビューに応じた元阪急のブーマー・ウェルズ氏【写真:舛元清香】

背番号44の後継者…頓宮裕真へ「このまま成長していい打者に」

 今回の来日は「日本プロ野球外国人選手OB会」の招きに応じてのもの。今も日本との関わりを大事にするのは、2つの理由がある。「日本の若いファンに、当時の貢献を知ってほしい」。そして「現役の外国人選手にも、我々のように取り組めば成功できるんだよと伝えたい」。だから、阪急の流れをくむオリックスの後輩にも、温かい視線を送る。

 頓宮裕真捕手が「ユーマー」という愛称で親しまれ、現役時代のブーマー氏と同じ応援歌で応援されていると知ると「同じ44番を背負っているのだから、このまま成長していい打者になってほしいね」と“こだわり”を披露し、背中を押した。

 助っ人大砲の代名詞ともいえる44番。米国でも通算755発のハンク・アーロン氏がつけた影響でスラッガーの定番だ。ブーマー氏は阪急で初めて背負ったが、日本では「4」が不吉とされる数字だと知り驚いた。「しかも、2つも入っているんだからね」。ただ実は学生時代、西洋で不吉とされる「13」を好んで背負っていたのだという。

「だから、俺はダブルのアンラッキーを跳ね返した男なんだ。アメリカでも日本でもね」

 スポーツ万能のブーマー氏は、NFLのジェッツからもドラフト指名を受け(1975年16巡目)、トレーニングキャンプに参加したことがある。「NFLの選手は、みんな自分の歯がなくて……。あまりやりたくはなかったね」とジョーク交じりに振り返った。膝を故障して野球一本に絞ることになっても「自分にとっては、あくまで野球がメインだったよ。でも力で負けても、頭でカバーできるところは共通しているかな」。

 日本になじみ、ファンに愛されたブーマー氏。自身と同じ道を歩く後継者の出現を待っている。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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