鎌ケ谷で奮闘も「まだまだやらないと」 15年目の“初アーチ”直後に見た中島卓也の真髄
西武との2軍戦で本塁打を放った日本ハム・中島卓也【写真:羽鳥慶太】鎌ケ谷で腕を磨き、レギュラーとなった中島…2軍戦では初のフェンスオーバー
8月17日に千葉・鎌ケ谷で行われた日本ハムと西武の2軍戦で、選手たちも驚く「珍事」が起きた。しつこくファウルで出塁を狙う“カット打法”で有名な中島卓也内野手が、プロ15年目でイースタン・リーグ初アーチを放ったのだ。「鎌ケ谷であの風なら、行くかなと思った」というほどこの球場を熟知しているものの、ダイヤモンドをゆっくり1周して生還するのは初めて。その裏で感じている変化とは――。
昔、日本ハムで現役だった頃の金子誠(現ロッテコーチ)に、こんなことを言われたことがある。
「俺みたいな9番バッターが打つと、試合が荒れちゃうんだよ。だから打たないほうがいいの」
5月に昇格も怪我で2軍へ「ここに来ると自分の時間が増えますから」
中島がプロ入りしたのは2009年のこと。最初は打撃練習でボールが前に飛ばないほど、プロのボールに圧倒された。担当の岩井隆之スカウトが見込んだ好守で居場所を作っていき、やがて1軍に欠かせない戦力となった。狙い球をひたすら待つ“カット打法”でも話題となり、2015年には盗塁王とベストナインを獲得。翌年は日本一の主力メンバーとなった。当時のレギュラー野手で、今も日本ハムに残る「最後の1人」でもある。
近年は1軍出場が減ってきていた。今季も1軍では8試合に出ただけ。5月9日に昇格したものの左脇腹を肉離れし、5月25日に登録抹消された。新庄剛志監督が就任した昨季からは外野守備にも取り組み、出番を増やそうとしてきた中での故障だった。
「もちろん怪我をしたことはショックでしたね。でも2、3日で切り替えました。ここに来ると自分の時間が増えますから。守備も打撃も、何が変化していくのか考えないといけないところですし」
「まだまだ、やらないといけませんから」変わり続ける中島に注目
来年1月には33歳となる。2軍の稲田直人コーチには「30を過ぎると“来る”ぞ」と聞かされた。「若い時みたいに足も動きませんしね……。この1、2年は、守備でも昔では考えられなかったことがありますよ。ノックでこう捕りたいと考えて動いても、腰が下りないとか。1歩目が出ないとかもあるんで」。日本ハムの若い野手陣では、とうに年長者の部類だ。
かつて見たベテランたちの姿も、頭に浮かぶ。遊撃に立つ大きな壁だった金子誠は「まだまだ両手で捕れという時代に、シングルハンドで捕るプレーが多かった。今考えると、足が動かないと捕れないんですよ。すごいですよね」。年を重ねてのプレースタイルを模索する上でのお手本は、頭の中にたくさんある。
本塁打を打ったところで「打撃は何も変わらない」という。その後の打席こそが真骨頂だった。8回には無死一塁から送りバントを決め、延長10回、2死一塁の打席は中前打でつないだ。「塁に出ることが自分の仕事」という中島にとっては、ある意味本塁打よりも納得できる“仕事”だったのかもしれない。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)