5度の指名漏れに戦力外… 歩み止めない元巨人右腕の思考「求められる以上は投げる」

BC神奈川で投手兼任コーチを務める高木勇人【写真:町田利衣】
BC神奈川で投手兼任コーチを務める高木勇人【写真:町田利衣】

巨人、西武でプレーした高木勇人は独立L・神奈川FDで投手兼任コーチを務める

 巨人、西武でプレーした高木勇人投手は今季、独立のルートインBCリーグ・神奈川フューチャードリームス(FD)で選手兼任コーチを務めた。2019年限りで西武を戦力外となった後も、メキシコや独立リーグで投げ続ける原動力はどこにあるのか。また、今年から新たに加わったコーチ業について、今の思いを聞いた。

 一回りほど年の離れた選手たちと、屈託のない笑顔で会話を交わす。自らも練習に励みながら、投手陣にノックを打ち、試合ではピンチになればマウンドに出向く。兼任コーチとなって初めてのシーズンを、高木は「凄く難しいですけど、選手100%、コーチ100%。選手で結果を出さないと威厳がなくなる。自分自身のプレーの技術を落とさないために練習もしっかりしないといけないし、かといってBCリーグの子たちを何とかNPBに送るためにやらないといけないので、本当に100%100%という気持ちでやっています」と充実の表情で語る。

 1989年生まれの34歳。徐々に、第一線で活躍する選手が減りつつある年代だ。故障などに苦しむ選手も少なくない。しかし高木は、舞台こそ独立リーグに移したが投げることを辞めない。

「投げようと思ったら投げられちゃうからです(笑)。壊れてもいいや、もし怪我したら終わりなんだ、と思って投げている感じではあるんですけど、壊れない。そうはいっても、プロ野球なので成績もちゃんとしないといけないとは思っているんですけど、まあまあな成績でまあまあな感じで投げられちゃうので、どのタイミングで辞めたらいいのか……。球団がもう終わりって言ったときが自分のタイミングなのかなと。投げられるなら投げて欲しいと言われているので、求められている以上は頑張りたいなと思っています」

初の指導者業は試行錯誤「今は引き出し、経験を増やしている状態」

 高校、社会人と計5度の指名漏れを経験。2014年ドラフト3位で巨人から指名されてようやくプロ入りを果たし、新人だった2015年に9勝(10敗)をマークしてオールスターにも出場した。人的補償で2018年から西武に所属。プロ通算5年間で計77試合に登板して16勝23敗、防御率3.90だった。

 2020年にはメキシカンリーグへの挑戦が決定。しかしコロナ禍によりシーズンが中止となると、同年途中から神奈川FDに加入した。2022年には再びメキシカンリーグを渡り歩き、2023年から兼任コーチとなって神奈川FDに復帰した。

 現在もコンディションは良好すぎるほどだ。「どこも痛いところはないし、どんなに投げても痛くならないんです」と笑う。だからこそ「求められる以上は選手として投げ続ける、そういうつもりでいます」と先を見据えた。

 指導者としては試行錯誤の毎日。「自分の中で引き出し、経験を増やしている状態。それを思い切りやらせてくれている環境なのが本当にありがたいので、教えられるのであれば教えていきたい。どこかでシフトはしていかないといけないですけど、今のところは100%と100%でどちらもガムシャラに頑張る。そう思ってやっています」と新たな楽しみも見出している。

 高木は言う。「好きなこと、自分のやっていることが常に正解だと思ってやっています。せっかくやるんだったら楽しんだ方がいいと思うんです、どんな仕事も。だから自分はどこに行っても、そうするようにしています。この先も、求められるんだったら投げ続けたいですね。これからなので、自分の人生」。変わらない“ほんわかオーラ”の中に、強い意志が宿っていた。

(町田利衣 / Rie Machida)

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