大激戦のパHR王は誰の手に? ロッテ助っ人が有利か…データで見る“本命”

楽天の浅村栄斗(左)とロッテのグレゴリー・ポランコ【写真:矢口亨】
楽天の浅村栄斗(左)とロッテのグレゴリー・ポランコ【写真:矢口亨】

夏場以降に調子を上げた選手も多く、先の読めない展開が続いている

 2023年のパ・リーグの本塁打王争いは、9月3日の試合を終えた時点で3本差に4選手がひしめく大混戦となっている。夏場以降に本塁打を量産している選手が多い点も今季の大きな特徴で、シーズン最終盤まで白熱したタイトル争いが予想される。

 リーグトップタイの浅村栄斗内野手(楽天)とグレゴリー・ポランコ外野手(ロッテ)から、4位の万波中正外野手(日本ハム)の間にある差はわずか3本。また、5本差でトップを追う柳田悠岐外野手(ソフトバンク)も、好調期に入った際の爆発力はキャリアを通じて証明済みだ。打者としての実績と経験を考えても、ここから逆転でタイトルを手にする可能性を秘めた存在といえよう。

 トップ5に入っている選手の中で、過去に本塁打王を獲得した経験を持つのは、2020年の本塁打王に輝いた浅村のみ。自身初の本塁打王が誕生する可能性があるという点においても、今季のタイトル争いは興味深いものとなっている。

 本塁打を1本記録するまでに必要な打席数を示す「AB/HR」は、本塁打王争いという観点では特に重要な指標となる。今回取り上げた選手の中でこの数字が最も優秀なのはポランコで、15.17打席に1本というペースで本塁打を記録。ホームランの期待値という基準で考えれば、タイトル争いの本命といえる存在になりつつある。ポランコが本塁打王となれば、ロッテでは1986年の落合博満以来となる。

 また、同18.74の浅村と、同19.48の近藤健介外野手(ソフトバンク)の2選手も、20打席以内に1本のペースで本塁打を放っている。指標の面から考えても、やはり現時点でトップ3に位置する選手たちが、タイトル獲得の有力候補であることが示されている。

 長打率の面では近藤が.533と唯一の.500超えを果たしている。長打率は必ずしも長打力そのものを示す数字ではないが、近藤はリーグトップの30本の二塁打を放っているだけに、打者としての総合的な生産性の高さが大いに示されているといえよう。

 そして、純粋な長打力を示す「ISO」という指標においては、ポランコが.235でトップに立ち、近藤がそれに次ぐ.227を記録。また、浅村は.197、万波と柳田はともに.192と、他の選手も一定以上の水準に達している。しかし、ISOが.200を上回っている2選手が、純粋な長打力という面でも優位に立っていると考えられる。

シーズン最終盤まで、抜きつ抜かれつの激しい争いが展開される可能性も十分

 現時点の調子という観点で言えば、夏場に差し掛かってから大きく調子を上げている、ポランコと近藤に期待が持てる。また、ポランコはAB/HRとISOのどちらもリーグトップと、指標の面でも抜群の長打力を示しているだけに、このままいけば終盤のタイトル争いをリードする存在となるかもしれない。

 一方、浅村はタイトル争いを3度にわたって制した経験という、メンタル面での大きな強みを持つ。緊張を強いられる最終盤において、過去の豊富な成功体験は大きな強みとなりうる。わずかな差でトップを追う近藤と万波、そして5本差で追う柳田を含め、最後の最後まで抜きつ抜かれつの争いとなる可能性も大いにあることだろう。

 果たしてどの選手が、熾烈な本塁打王争いを勝ち抜くのか。あるいは、複数人のタイトルホルダーが誕生する可能性はあるのか。栄冠を争う強打者たちが見せる豪快なバッティングに、残るシーズンはあらゆる意味で要注目だ。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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