自信失った日から復活 高校時代から話題の126キロ右腕が女子W杯開幕投手に大抜擢

侍ジャパンに選ばれた巨人・小野寺佳奈【写真:読売巨人軍提供】
侍ジャパンに選ばれた巨人・小野寺佳奈【写真:読売巨人軍提供】

7連覇を目指す日本女子代表は小野寺佳奈が開幕投手 宮本和知監督の“緩いカーブ”習得

 チーム最年少の右腕がW杯7連覇へ力投する。カーネクストpresents「第9回WBSC女子野球ワールドカップ・グループB」が13日、広島・三次きんさいスタジアムで開幕。巨人女子チームに所属する小野寺佳奈投手が初戦のプエルトリコ戦(午後6時30分開始)に先発予定。女子U-18代表に次ぐ2度目の侍ジャパン入りを果たした若き右腕は、巨人・宮本和知監督と二人三脚で身に付けた緩急で勝利へ導く。

 今春のWBCから始まり、日米大学野球やU-18、そして世界身体障害者野球と、日本の野球が頂点に立っている。そして13日からはいよいよ女子の侍ジャパンが船出する。小野寺はクラーク仙台(宮城)で過ごした高校時代からストレートに定評がある本格派右腕で、日本の女子野球史上最速129キロに迫る126キロの速球を投じる。まだ21歳ながらベテラン選手をも力でねじ伏せる。

 だが、若き剛腕はある悩みを抱えていた。伏し目がちに「自信はあるんです」と言いながらも肩を落とし「バッターが真っすぐを張っていて、打たれることが多くなったんです」と声を絞り出した。

 その表情は悔しさに満ちていた。それだけ努力を重ねてきた証だった。1990年代に左のエースとして巨人を支えた宮本監督へ胸中を打ち明けると、「(ストレートとの)緩急差をつけたカーブでカウントを奪うように」とアドバイスをされたという。小野寺はうつむきながら話を続けた。

「打者のタイミングをずらすコツを教わったんです。ブルペンでも見てくださって、ずっとカーブを投げて……。これまでも試合でカーブを投げることはありましたけど、ここまで遅いものではなかったです。球数に対するカーブの比率も少なくて、逆にストレートばっかり。それで押していくスタイルだったので」

侍ジャパンに選ばれた巨人・小野寺佳奈(右)【写真:読売巨人軍提供】
侍ジャパンに選ばれた巨人・小野寺佳奈(右)【写真:読売巨人軍提供】

アジア杯で最優秀防御率、最優秀投手、ベストナインの3冠に輝いた

 球速、球威を追求してきた右腕にとって、遅くて緩いカーブの練習はとても退屈なものだったのかもしれない。だが、武器になった。5月21日から6月1日まで香港で行われた「第3回BFA女子野球アジアカップ」では、指揮官に教わった90キロ未満のカーブを交えた緩急あるピッチングで、先発として2試合7イニングを無失点に抑えてみせた。さらに最優秀防御率、最優秀投手(2勝0敗)、ベストナイン(先発投手部門)の3タイトルを受賞。ワールドカップへの自信を得た。

 それでも、やはり愛着があるのはストレートのようだ。巨人女子チームの選手は、ジャイアンツ球場でボールガールを務めるなど、普段から現役の男子選手を間近で見る機会が多い。「やっぱり変化球よりストレートが気になりますね。わかっていてもボールが速くて、キレがいいんです」と、男子が投じる球に感嘆する。特に、最速158キロを誇る守護神・大勢投手のピッチングには息を呑んだという。

 グループAから決勝ラウンド進出を決めているオーストラリア代表には、女子における世界最速137キロ(85.9マイル)を投じる左腕、ジェネビーブ・ビーコム投手がいる。「実際に自分の目で見てみたい。欲を言えばアドバイスもほしいです」とはにかむ。ストレートの話をしているときの小野寺はずっと笑顔だった。

 グループBには6つの国と地域が出場し、上位2チームがカナダで行われるファイナルステージに進む。ストレートを磨き、カナダでの対戦を心待ちにしている。

【動画】高校時代から凄いと評判 女子で126キロ、W杯開幕投手に抜擢された巨人・小野寺佳奈の剛球

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