V完全消滅、失われた西武の長所 4年前の栄光と真逆…“走魂”浸透も求められる緻密さ

西武・松井稼頭央監督【写真:小林靖】
西武・松井稼頭央監督【写真:小林靖】

先発松本が初回に4失点も…3回に追いつく反発力

■ソフトバンク 8ー4 西武(12日・ベルーナドーム)

 西武は12日、本拠地ベルーナドームで行われたソフトバンク戦に延長11回の末4-8で敗れ、今季優勝の可能性が完全に消滅した。松井稼頭央監督の就任1年目は、不動の4番として当てにしていた山川穂高内野手が5月上旬に不祥事で離脱するなど、苦しい戦いの連続で現在リーグ5位に低迷している。クライマックスシリーズ(CS)進出へ一縷の望みをかけ、さらに来季巻き返しを期すには、何がポイントとなるだろうか。

 西武にとって悪い意味で節目の日となったが、打線は粘り強さを見せた。先発の松本航投手が初回、いきなり5安打1四球で4点を奪われた。それでも2回にマーク・ペイトン外野手の中犠飛で1点を返すと、3回には2死満塁で西川愛也外野手が右前へ2点適時打、続く源田壮亮内野手も右前適時打を放ち、一気に同点に追いつく反発力を見せた。

 延長11回に登板した、7番手の左腕・公文克彦投手の4失点が誤算で敗れたが、松井監督は「よく追いついたと思います。4点取られた中で、前半のうちに追いつけたのは非常に大きかったと思います」と前向きにとらえた。

 12日現在、オリックスに次ぐリーグ2位のチーム防御率2.93をマークしている一方で、チーム打率.236は同5位、377得点は同ワースト。“山賊打線”の破壊力を前面に押し出してリーグ連覇を達成した2018、2019年とは対照的に、いまや“投高打低”の傾向が顕著だ。

 それでもここにきて、ドラフト1位ルーキー・蛭間拓哉外野手、3年目の長距離砲・渡部健人内野手らが台頭し、打線にも上昇の気配が見える。5月は.210、3度の零封負けを含む10試合連続2得点以下があった6月は.217と散々だったチーム月間打率は、9月にはリーグトップの.281(12日現在)をマークしている。来日1年目のデビッド・マキノン内野手とペイトンも、日本の野球に慣れ持ち前の打棒を振るい始めた。これをいかに継続、成長させていくかが鍵だろう。

チーム盗塁数増で昨季リーグワースト→同2位

 また、現役時代に盗塁王を3度獲得した松井監督の下、チームスローガンに「走魂」を掲げたとあって、昨季はリーグワーストの「60」だったチーム盗塁数が、既に同2位の「70」に上っている。積極的に1つ先の塁を狙う走塁も浸透しつつある。ただ、思い切った盗塁や走塁にはリスクが付き物。この日も4-4で迎えた9回、1死から左前打で出塁した外崎修汰内野手が、続く蛭間の初球に二盗を仕掛けたが、甲斐拓也捕手の強肩に刺された。一発長打から機動力を駆使して1点をもぎ取る野球へ、精度を高めていくのはこれからだ。

 一方、高橋光成投手、平良海馬投手、今井達也投手の3本柱をはじめ、先発は駒がそろった投手陣だが、抑えに不安がある。守護神の増田達至投手が防御率5.45と振るわず、今月1日から2軍調整。代わりに、今季途中に入団したブルックス・クリスキー投手が抑えを務め、これまで8試合(計8回)を無失点に抑え、3セーブを挙げている。

 松井監督は「(増田は)また戻ってきてくれると思いますし、待っています」と変わらない信頼を示す。増田が復活できるか、あるいは取って代わる人材が出てくるのか……。いずれにせよ、優勝を争うチームとなるためには、避けては通れない問題だ。

 優勝の可能性が消えても、松井監督は「選手たちは本当によくやってくれていると思います。試合がまだありますし、CS(進出の可能性)もあるわけですから、最後まで1試合1試合戦っていきたい」とファイティングポーズを崩さない。残り18試合で4位楽天に4.5ゲーム差、CS出場圏内の3位ソフトバンクには7ゲーム差をつけられているが、決して諦めることはない。ファンとしては、チーム強化へ明るい材料を1つでも多く見せてほしいところだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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