ダルビッシュに学んだ“自己管理術” 台湾は1試合退団でも…33歳が投げ続けるワケ

8月まで楽天モンキーズでプレーした由規【写真提供:楽天モンキーズ】
8月まで楽天モンキーズでプレーした由規【写真提供:楽天モンキーズ】

台湾の楽天モンキーズを8月末で退団した由規投手

 かつてヤクルトなどで活躍した由規投手は今夏、台湾プロ野球の楽天モンキーズと契約も8月末に退団した。それ以前に所属していたプロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの埼玉武蔵では、コーチ兼任投手でプレーした。NPBを目指す選手に、どんなことを伝えていたのだろうか。

 2007年高校生ドラフトで5球団から1巡目指名を受けた右腕は、入団3年目に当時NPB最速の161キロをマークするなど活躍した。しかし、その後は度重なる怪我に苦しみ、ヤクルト、楽天で戦力外を経験。2021年から埼玉武蔵でプレーしていた。

「入団して、それまで抱いていた独立リーグの印象が全く変わりました。環境が悪いと言われることもありますが、NPBに行きたい、ドラフトで指名されたいという選手ばかりで、すごく活気がありました。試合を見に来てくれるファンや、周りのサポートがあってチームは運営できている。支えてくれる方々に改めて感謝の気持ちを持つようになりました」

 2022年からは投手コーチも兼任。コーチとして選手に一番に伝えていたことは、準備を怠らないようにすることだった。「準備をしっかりやらないと、結果が良かったとしても、何が良くて結果が出たのかわからない。自分のルーティンを作り、引き出しを増やすように言っていました」。

 準備の大切さを学んだのは故障を経験してから。それ以前は年齢も若く、準備をしなくても投げられた。しかし、怪我をしてからは準備ができているかどうかで、その日の調子が全く変わったという。

「野球をやらせてくれる環境がある限り、投げ続けたい」

「今日は何の準備をしたから良かったのか、メモを取りながら日々比べて答え合わせをしていました。そのうちにだんだん『これ』というものが確立されていきました」。グラウンドでの動きだけではなく、食事やサプリメントの摂り方にも気を遣った。きっかけは、ダルビッシュ有投手(パドレス)と自主トレをしたことだった。

「1度自主トレを一緒にやらせていただく機会がありました。食事に関しては、それまでは全く興味がなく無知だったのですが、色々教えていただき、自分でも何を摂ったらいいのか考えるようになりました。食べるものを意識することで、ちょっとした体の変化にも気付けるようになりました。それからは『試合前はこれを食べる』『これは絶対に食べない』というものができてきた。食事も含めて準備だと思っています」

 埼玉武蔵の若手選手たちに伝えることで、自身の行動にも責任が生まれた。「自分がやっていないと聞く耳を持ってもらえない。口で言うよりも行動で示すことを大事にしています」。台湾でプレーした2か月間も、油物が多い台湾料理の摂取量に気を遣ったという。

 台湾での登板はわずか1試合に終わった。それでも「野球をやらせてくれる環境がある限りは投げ続けたいと思っています」と話す。33歳右腕は今後も挑戦を続けながら、自身の経験を若い選手たちに伝えていくつもりだ。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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