侍ジャパンに新風…異色すぎる“井端スタイル” WBC白紙&アンダー兼務の独自路線

侍ジャパンの新監督に就任した井端弘和氏【写真:小林靖】
侍ジャパンの新監督に就任した井端弘和氏【写真:小林靖】

井原強化委員長が挙げた“6つの条件”に適合する

 かつて中日、巨人で名遊撃手として鳴らした井端弘和氏が、野球日本代表「侍ジャパン」のトップチーム監督に就任し、4日に都内のホテルで記者会見が行われた。中学生世代のU-15代表の監督も兼務し、トップチームとアンダー世代の監督兼任は史上初のケースだ。契約期間の考え方もユニーク。現役時代にいぶし銀の実力者としてファンをうならせた男は、新たな指揮官像を披露してくれることになりそうだ。

 異例のトップチーム&U-15監督兼任について、会見に同席した侍ジャパン強化委員会の井原敦委員長は「ご本人が強くご希望されたものです」と明かした。井端氏は昨年から今年にかけて、小学生世代の侍ジャパンU-12代表監督を務めた。「子どもには未来しかない。どこまで伸びるかわからないので、細かいことは一切言わず、打ち勝つ野球を教えてきました」と、アンダー世代の育成に並々ならぬ意欲とこだわりをうかがわせる。

 兼任は負担が大きいはずだが、井端氏は「これまでに臨時コーチなどを含めて、U-12、U-18、U-22に関わらせていただきましたが、U-15には侍ジャパンとしての戦い方など、いろいろなことを伝えきれていないという思いがありました。そこは強く要望させていただきました」とキッパリ。過去には、これほど子どもの世代まで視野を広げて指揮を執った日本代表監督はいなかっただろう。

 井原強化部長は、侍ジャパンのトップチームを率いる6つ条件に、「アマチュアを含む日本野球界への理解」と「侍ジャパン事業への理解」を含めていた(その他の4つは国際大会・海外経験、求心力、知名度、発信力)。そういう意味で、井端氏のアンダー世代へのまなざしは、うってつけと言えるのかもしれない。

来年11月の「プレミア12」で真価を問われ、2026年「WBC」は白紙?

 一方、契約期間は「2024年11月に開催される『第3回プレミア12』までの契約を前提としていますが、まずは今年11月の『第2回アジアプロ野球チャンピオンシップ』の指揮を執っていただき、その後については、1大会ごとに契約を継続・更新していく形を考えております」と井原強化委員長。

 ということは、出場選手が1999年1月1日以降生まれの24歳以下、または入団3年目以内(他にオーバーエージ枠として、29歳以下の選手3人の出場が認められる)に限られ、出場チームも日本、豪州、チャイニーズタイペイ、韓国の4つのみの『アジアチャンピオンシップ』は、いわば試運転とも言えるだろう。

 来年11月の「プレミア12」で、井端氏の手腕が問われる。日本で最も注目される国際大会で、今年に続く4度目の優勝を期待される2026年の「第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」で指揮を執る監督は、「プレミア12」の結果次第で井端氏にもチャンスが出てくるかもしれないが、現時点で白紙と見るのが妥当だろう。

 当面のアジアチャンピオンシップを前に、「いま活躍している若い選手のほとんどは、まだ“世界”を経験していない。少しでも世界を経験して、その中でいいものを出してさらに成長し、次の大会に備えてほしい」と語った井端氏。侍ジャパンには珍しい“育成型”の指揮官の誕生だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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