阪神から移籍→客席ガラガラで萎えた剛腕 後輩から痛烈助言「パはこんなんです」

阪神、オリックスでプレーした野田浩司氏【写真:山口真司】
阪神、オリックスでプレーした野田浩司氏【写真:山口真司】

中嶋監督は「パの監督で一番見えている」…野田浩司氏が絶賛

 中嶋聡監督率いるオリックスのパ・リーグ3連覇に、OBの野球評論家・野田浩司氏も最大級の賛辞を送った。「ピッチャーの次元は違うし、采配面では相手が嫌だろうなと思うことをやっている。選手もうまいこと入れ替えながら使っている……」。野田氏にとって、中嶋氏はかつてバッテリーを組んでいた相棒。中嶋オリックスの今後について言及しつつ、捕手・中嶋との思い出もいくつか振り返ってもらった。

「監督に就任して3年連続だからすごいですよね。やっていることは一緒ですが、本当にうまく選手を使いますよね」。野田氏は3連覇を決めた9月20日のロッテ戦(京セラドーム)について、「T-岡田をスタメンで使ったし、安達(了一)も代打で出した。功労者の2人をああいう試合で使ったりしますからね」と言って、こう付け加えた。「去年も勝てば優勝の楽天との最終戦に(当時2年目の)来田(涼斗)をスタメンに使ったでしょ」。

 野田氏は昨年、吉田正尚外野手(現レッドソックス)に「中嶋采配でびっくりしたことは何?」と聞いたそうで、「そうしたら正尚は、その日の来田スタメンを言っていましたよ」と話す。「中嶋はバントをそんなにしないけど、ここでバントされたら嫌だなってところはしますからね。バントよりも足を使ってエンドランとか、一気に点が取れそうなところでは打たせるとか、よくわかっている。パの監督では中嶋が一番見えているのかなって思いますね」と、ベタ褒めだ。

 さらに今年の選手起用では「吉田の抜けた穴について、よく言われていましたが、森(友哉)が(FAで)来てくれたのはもちろんあるけど、頓宮(裕真)がよくなったし、前半は茶野(篤政)ですよね。彼を発掘したのは前半のヒットでしたよ」と、チーム全員の能力をきっちり見極める“ナカジマジック”に最敬礼するばかり。

 山本由伸投手のメジャー挑戦も取りざたされているが「投手陣は豊富。まだ椋木(蓮)もいますからね。去年、トミー・ジョン手術をしたけど、彼はいいですよ。来年は先発で出てくるでしょう」とまだまだ盤石と予想した。

 椋木は2021年ドラフト1位で東北福祉大からオリックス入りした右腕。ルーキーイヤーの2022年、2試合目登板となった7月20日の日本ハム戦(京セラドーム)では9回2死までノーヒットピッチングの快投を見せた。その後、右肘手術に至ったが、順調に回復している模様。野田氏は「彼の球は下から突き上げますからね。今年のキャンプで中嶋と話した時も『椋木が痛いです。球が違うから』って言ってましたし、期待は相当ありますよ」と言い切った。

オリックス・中嶋聡監督【写真:小林靖】
オリックス・中嶋聡監督【写真:小林靖】

オリックスに移籍した野田氏に響いた中嶋捕手からのアドバイス

 現役時代の野田氏は、中嶋捕手と何度もバッテリーを組んだ。最も印象深いのは阪神から移籍した野田氏のオリックス初登板試合(1993年4月14日の西武戦、グリーンスタジアム神戸)。「西武戦は一番お客さんが入ると聞いていたのに全然。嘘やろって思いながら投げていたら、中嶋がマウンドに来て『野田さん、パ・リーグはこんなんですから、自分でテンションを上げてください』って」。このアドバイスで気持ちを切り替えたそうだ。

 他にも「フォークを生かすのに『右のアウトコース、左のアウトコースを絶対使った方がいい。外を見せて踏み込ませた方が野田さんのフォークは効きますよ』と教えてもらった」とか「西武の鈴木健が大の苦手だったんだけど、あるとき2ボール2ストライクか1ボール2ストライクで中嶋がカーブのサインを出してきた。自信がなかったけど、まぁいいやと思って投げたら打ち取った。バッターの頭にはない発想。こういうのもありだなって思った記憶がある」。

 ただし、その頃には将来、監督をやるような雰囲気の持ち主ではなかったそうだ。中嶋氏は1997年オフにオリックスからFAでメジャー移籍を目指したが、断念して西武に移籍。その後、横浜、日本ハムと渡り歩いた。引退後も日本ハムからパドレスに派遣されるなど「他球団に行って、かなり勉強したんでしょうね」。現在の采配が奥深いだけに、なおさら、そう感じるようだ。

 クライマックスシリーズ・ファイナルステージに向けて、野田氏は「やっぱりオリックスにアドバンテージの1勝があるのは大きすぎる。相手がファーストステージにエースを温存して、ファイナルステージに持ってくれば面白いかもしれないけど、それはファンが許さないでしょうしね」とオリックス優位を唱える。「(山本)由伸でポンといかれれば、ほぼヨソはキツいですもんね」。山下舜平大ら故障者が多いのは気になるものの、ポストシーズンも“ナカジマジック”が炸裂するとみている。

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