最下位中日の希望…育成出身右腕は「全然へこたれない」 コーチが明かした“強み”

中日・松山晋也【写真:矢口亨】
中日・松山晋也【写真:矢口亨】

中日・松山は6月に支配下→36試合の登板で防御率1.27、奪三振率12.74

 わずか4か月前まで育成選手だったとは思えないほどの躍進ぶりだった。中日の松山晋也投手は、八戸学院大から2022年の育成ドラフト1位で入団。今年6月に支配下登録を勝ち取ると、36試合の登板で防御率1.27、17ホールドを挙げて1年目を終えた。力強い直球とフォークを武器に、驚異の奪三振率12.74を誇った右腕について、ヘッド兼投手コーチを務めた落合英二氏は「育成で獲れたというのは、うちにとっては凄くラッキーだったと思います」と目を細めた。

 2月の春季キャンプ中、1軍で投げる機会があった。落合コーチは「そのときからいいものはあった。イケイケだけの投手だったけど、そのイケイケが、いい意味で1年間ずっとうまく、そのままの気持ちでできていますね」と振り返る。何よりも、快投が続いた要因を「性格もあるよね、プロ向きだから。全然へこたれない」と明かす。「何一つ不安にならず、勝負するマウンド上の性格は抜群。当然、少しずつやられているのはやられているから恐さも感じているけれど、それでもへこたれない。まず性格がすごく向いている」と驚くほどのメンタルがある。

 それに加えて、188センチの長身から独特のダイナミックなフォームで投げ下ろす威力抜群の直球と、決め球のフォーク。「打者はやはり打ちにくそうにしているなと。昔の担ぎ投げじゃないですけど、ああいうタイプがだいぶ今の時代に減ってきているから、フォーム的なものも有利に、打ちにくさもうまく使えているかなと思います」と分析した。

 並みいる強打者たちが松山のフォークを空振りする理由は「腕を振るから」と単純明快だ。「制球を狙っているわけではないんだけど、ゾーンに『えい』っていう投げ方をするから、やはり打者は打ちにくい。どこにくるか分からないというのもあるし、腕を振られる。やはりいい打者ほど反応が速いからハーフスイングも取れる」。そうして35回1/3イニングで50奪三振を積み重ねた。

 初めてのプロでのシーズンで当然、疲れもあった。7月16日には腰の違和感で抹消されたが、29日に復帰。「疲れからフォークが抜けたりとかいうのは当然くるし、そういうコンディションは1年間やってみてだいぶ痛感はしていると思うけど、ちょっと休めばまたすぐに復活できるから、大したもんだと思いますよ」と落合コーチは“丈夫さ”も称えた。

 2000年生まれの右腕が、チームに与えている影響も大きいという。「(同学年の)根尾とか近い年代でいい競争ができているし、いい存在感にもなっているから、いい意味で先輩たちにも火をつけているし、存在自体が今は助かっている感じがしますね」。そして「ゆくゆくは……。ライデルもずっといるわけではないだろうし、日本人の抑えをつくれれば、今後のドラゴンズは未来が明るいんじゃないかな」と期待を込める。チームは2年連続最下位に沈んだが、松山の投球は確かな希望の光を灯した。

(町田利衣 / Rie Machida)

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