「もういっか…変えちゃおう!」 フォーム改造、髪もバッサリ…オリ宗が捨てた“苦悩”

オリックス・宗佑磨【写真:荒川祐史】
オリックス・宗佑磨【写真:荒川祐史】

オリックス・宗佑磨内野手、覚悟を決めての“散髪”

 大きな鏡の前に座り込み、じっと自分の目を見つめた。オリックス・宗佑磨内野手は、1年以上も伸ばしていた髪を触って言う。「今、迷ってるんですよね。どうするのか。少し時間をください」。プロ入り当初から9年間、お世話になっている美容師は1度ハサミを置いた。

 モヤモヤの心を晴らしたかった。5分ほど考え抜いた宗は、パッと目を見開いて言った。「やっぱり、思い切り行ってください!」。悩ましい気持ちを捨てた瞬間、気心の知れた美容師は、バッサリと長髪を切り始めた。

「思い切ってウィル・スミスみたいにするか、このまま伸ばすかを考えていたんです。だけど、どこかのタイミングで(髪を)切ろうとは思っていたので『もういいや、今日にしよう』と思ったんです。もう、いいかな……ってね。(頭を)丸めてやんよ! って感じでした(笑)。さっぱり、切り替えるのも大切ですからね」

 10月3日の夜、足元に落ちる髪の毛を見て、宗は気持ちのスイッチを入れ直した。「(水本)ヘッドに怒られたんで、それもきっかけの1つですね(笑)」。ジョークを炸裂させられるのは、胸中がスッキリしたからだろう。翌4日、ロッテ戦(京セラドーム)の試合前練習に姿を見せると、笑顔で帽子を脱いで頭を指差した。「(帽子が)ブカブカになりました。サイズ1つ小さくしようかな……」。にこやかな表情が戻っていた。

シーズン中に打撃フォーム改造にも着手【写真:荒川祐史】
シーズン中に打撃フォーム改造にも着手【写真:荒川祐史】

変化恐れずシーズン中に打撃フォーム改造にも着手…「まだまだ、ここから」

 モデルチェンジしたのは髪型だけではない。独特な打撃フォームも急遽、改造した夜がある。9月9日のロッテ戦(ZOZOマリン)を終えると、自主練習に励んだ。今季の自身が積み重ねてきた成績に、納得がいかなかった。翌10日の相手先発は佐々木朗希投手だったことも、きっかけだった。

「もういっか……変えちゃおう……! どうせ打ててないし(今季.245)ここで思い切って変えるか!」

 右足を外側に1足分ほど開いてオープンスタンスで構え、バットを持つ両手の位置を顔の付近から、耳の横あたりに持ってきた。「リラックスして構えて、タイミングを早めに取る。マイナーチェンジは日々しているんですけど、今年はずっと変な感覚だった。しっくりこなかったので、変えちゃおうと思いました」。1スイングずつ頭の中で投球軌道を描き、強く振った。

 シーズン途中での“転換”には不安もあった。「こぇーっすよ、マジで怖い。大きく変えるのは、僕自身にも怖さがありました。だけど、ここまで来たら関係ねぇなって」。欲しかった結果は、すぐに出た。

 9月10日のロッテ戦、初回1死から打席に向かうと初球の内角157キロ直球を捉えた。打球はグンと伸びて、右翼フェンス直撃の二塁打に。「あれが良いイメージになったので、今も少しずつ取り組んでいます」。その後も状態向上に努め、10月は公式戦3試合で11打数5安打の打率.455。CSファイナルは4試合で15打数6安打の打率.400。今月は26打数11安打の打率.423と好調をキープしている。

 苦悩は捨て切った。ギラつかせた目で言う。「まだまだ、ここからですから」。見据える2年連続日本一へ、熱い思いを全てぶつける。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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