入団テストで悪夢の5三振も…まさかの合格 人生変えた言葉「出過ぎた杭は打たれない」

元日本ハム・杉谷拳士氏【写真:荒川祐史】
元日本ハム・杉谷拳士氏【写真:荒川祐史】

日本ハムの入団テストを経てドラフト6位でプロ入り

 まさかプロにいけるとは……。元日本ハムの杉谷拳士氏は帝京高から入団テストを経て、2008年ドラフト6位でプロ入りした。運命のドラフト会議前の10月中旬に千葉・鎌ケ谷スタジアムで行われた入団テストでの猛アピールが実ったのか。決してそんなことはなかったようだ。

「結果は散々でした。6打数無安打5三振。相手投手は大学・社会人の投手だったんですけど、みんな球が速くて。左打席でも打ってと言われたんですけど、全く打てませんでした」

 入団テストには後に同期入団となる谷元圭介投手(当時バイタルネット)らが参加。高校3年夏は4回戦敗退。そこからはプロ入りを見据えて木製バットで練習してきたが、全く歯が立たなかったという。

 日本ハムは「新庄さん、(森本)稀哲さんが本当に楽しそうに野球をやっている」という“意中”の球団だった。「社会人野球で頑張って、3年後に指名してもらえるように」。内心はこんな気持ちにもなったというが、なんとか自分の持ち味を出そうとした。

「本当に気持ちだけ。気持ちだけは負けないようにしようと。これだけ打てなかったら、正直悔しい。だけど、元気とガッツだけは見せようと。自打球が当たってめちゃくちゃ痛かったんですけど、そのまま全力で走りました」

 現役時代は球界屈指のムードメーカーとしてチームを盛り上げた。ただ、決して作ったキャラクターではない。「気づいた時にはこんな感じでした。ただただ、野球が好きで」。元来の気質は、帝京高の前田三夫監督をも魅了した。

「『出る杭は打たれる。でも、出過ぎた杭は打たれません』『いいぞ、ガンガン行け』と。1年生の時、高校に入ってすぐぐらいに言われました。だから、野球をやっている間は自分を表現したいと思いました」

 この底抜けの明るさがプロ入りにつながるとは……。当時17歳の杉谷氏は思ってもみなかった。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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