指名漏れの医学部右腕、静岡球団のテスト受験へ 冷めぬ“情熱”「医学の道は一旦ストップ」

最速147キロを誇る群馬大準硬式野球部・竹内奎人【写真:本人提供】
最速147キロを誇る群馬大準硬式野球部・竹内奎人【写真:本人提供】

群馬大医学部の竹内奎人はドラフト指名漏れ「卒業後は野球の道に絞ります」

「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」が26日に都内で行われた。群馬大医学部で準硬式野球部に所属する竹内奎人投手に注目が集まったが、名前が呼ばれることはなかった。史上初の医学部医学科からプロ野球選手の誕生とはならなかったが、竹内は「卒業後は野球の道に絞ります。医学の道は一旦ストップです」と、プロ野球選手の夢を追いかけることを誓った。

 大学の会議室には会見場が用意されたが、最後まで使われることはなかった。ドラフト会議終了直後、群馬大学病院の一室を自ら用意し、インタビューに答えてくれた24歳は、「元々可能性は薄かったので、やっぱりかという思いと、残念という気持ちも半分」と冷静に振り返ったものの、表情からは悔しさがにじみ出る。

 指名されることはなかった。それでもまだ夢がついえたわけではない。「卒業後は野球の道に絞ります。医学の道は一旦ストップです」と、前を向いた。さらに「第1志望は静岡の球団です」と、静岡市を本拠地とし、来季からの2軍ウエスタン・リーグ参入が内定しているハヤテ223のトライアウトに挑戦する予定であることも明かした。

 竹内は中学時代から、U-15日本代表に選出。静岡高では後にDeNA入りした左腕・池谷蒼大との2枚看板で2年秋に東海大会優勝。3年春の選抜を経験するなどエリート街道を走ってきた。しかし、「大学入学当初は、プロになりたい思いはなかったです」。医者になるという夢を追いかけるため、準硬式野球部には所属したものの、実質野球からは離れる決断をした。

群馬大・竹内奎人【写真:木村竜也】
群馬大・竹内奎人【写真:木村竜也】

 それでも、幼少期からの夢は簡単に諦めることはできなかった。「(大学で)徐々に能力が上がっていくうちに、このまま野球を終わっていいのかと思い始めました」。忙しい授業や実習の傍ら、チーム練習だけでなく、医学部で身に着けた知識をもとに肉体改造にも励んだ。球速は6キロも上がるなど、目に見える成長が自信になった。

「医学部生である以上、100%野球だけに時間や労力を割けるわけではありませんでした。なので、後悔しないためにも、今しかできないプロへの挑戦を、次は100%野球に絞って取り組みたい」

 医者としての人生を歩めば安定した生活は手に入るかもしれない。来年は無職の可能性すらある。それでも、消えることなき野球への情熱が竹内を前進させる。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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