「弱冠65歳、頑張ったよ」 侍J女子エースに完敗も…原前監督に生きる“4番の誇り”

「4番・三塁」でスタメン出場した原辰徳前監督【写真:荒川祐史】
「4番・三塁」でスタメン出場した原辰徳前監督【写真:荒川祐史】

侍ジャパン女子代表のエースと対決 見送り三振も判定に不服

 巨人の「第1回ジャイアンツ祭り レジェンドOBvsジャイアンツ女子チーム」が12日に静岡草薙球場で行われ、レジェンドOBは1-8で敗れた。「4番・三塁」でスタメン出場した原辰徳前監督は2打数無安打に終わったが、現役時代さながらの三塁守備を披露し、6300人の観客は大喜び。挨拶に訪れた阿部慎之助監督とも和やかなトークを交わした。

 打席に立つと、スタンドのファンが現役時代の応援歌のメロディを奏でる。こうなれば、ムードはもう20世紀。2回先頭で第1打席を迎えた原前監督は、侍ジャパン女子代表のエースでもある右腕・小野寺佳奈投手と対決。カウント2-2から6球目に、外角低めの球をストライクと判定され見逃し三振に倒れると、ベンチへ戻る際に両手を広げ、判定に不服そうな仕草を見せた。

「あれはボールだよ、あれはボール! 打っても凡打。だからしようがない。そういう気持ちじゃないと4番バッターは張れないから」。巨人で4番を務めた「1066試合」は、川上哲治氏、長嶋茂雄氏、王貞治氏に次いで球団史上4番目に多い。自身が“聖域”と呼ぶ巨人の4番の座には、やはり並々ならぬ矜持を感じさせた。

 4回先頭での第2打席も、ジャイアンツ女子3番手の伊藤春捺投手の前に捕飛。守っても、2回1死走者なしで三ゴロをさばいた後、一塁へ悪送球し失策が記録された。それでも、2死後に三遊間のゴロをグラブに収め、現役時代を彷彿とさせるランニングスローでアウトにするなど、計4度の守備機会のたびにスタンドを沸かせた。5回の守備からベンチに退いたが、観客の反応はピカイチだった。

「弱冠65歳、頑張ったよ」。原前監督自身、満足げにうなずく。コロナ禍を経て、日本中が賑わいを取り戻そうとしているのを象徴するような盛況ぶりに、「いろんなことができるような日が来た、というところではないでしょうか。社会貢献であったり、野球が広がっていくことがあれば一番いいと思います」と笑顔を浮かべた。

駆けつけた阿部慎之助監督への気遣い

 大物OBがズラリと顔をそろえたとあって、宮崎で秋季キャンプ中の阿部慎之助監督も試合前にあいさつに駆けつけた。試合開始を待たずに宮崎へとんぼ返りする慌ただしさだった。

 原前監督も新監督と改めて言葉を交わし、「宮崎の行きつけのお店にワインをたくさん置いてある。来年、俺が行った時の分を少しだけ残しておいて。あとはお前さんにあげる」と気遣ったそうだ。

「OBの人たちも『(来季以降の巨人を)全面的に応援する、頑張れ』とエールを送ったというところですね。ワイン? あいつはいつだって飲んでたよ」と報道陣向けにジョークを飛ばすと、さわやかに球場をあとにした。若大将スマイルは永久に不滅、かもしれない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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