“一味違った”戦力外の元新人王 現地で見た専門家が絶賛した「欲しがる」理由

阪神・高山俊【写真:荒川祐史】
阪神・高山俊【写真:荒川祐史】

阪神戦力外の高山は5打数2安打2四球1盗塁と猛アピール

 59選手が参加した「プロ野球12球団合同トライアウト」が15日、鎌ケ谷スタジアムで行われた。注目を集めたのは2安打を放ち、阪神で新人王にも輝いた高山俊外野手。解説者として現地で各選手のプレーを見届けた元ヤクルトの坂口智隆氏は「まだまだ1軍で活躍できる選手。足が動いていたところは一番、評価できる部分」と絶賛した。

 カウント1-1から始まる打者が不利な状況でも結果を残した。高山は第1打席でソフトバンクの左腕・岡本と対戦。フルカウントから内角直球を捉えると打球は右中間を切り裂く二塁打、第2打席は広島・薮田のフォークに空振り三振。第3打席は元ヤクルト・山川から強烈な右前打とマルチ安打をマークした。

 直球にも力負けしない鋭いスイングを見せた元新人王に、坂口氏は「参加した選手のなかでは実績もあり、プレーする姿も一味違った。初見の投手にもアジャストしてスイングも申し分なかったと思います」と、全打席を振り返った。

 そのなかでも、注目したのは“足の動き”だった。「本人もそうだと思いますが、足の怪我があったなかで各球団が気にしているのは“動けるかどうか”。泥臭さも見えましたし、僕はその部分が一番大事だと思っている。その覚悟は見せてくれたと感じています」。凡打でも全力疾走を怠らず、二盗にも成功。打撃だけでなく動ける姿をしっかりとアピールしていた。

2015年の“勘違いドラフト”「高山選手がヤクルトに入っていたら僕は獲得されてないと思う」

 高山は入団当初から注目していた選手だった。2015年のドラフトでは阪神とヤクルトが高山を1位で指名。抽選では真中監督が両手を高く掲げガッツポーズを見せたが、その後に交渉権が阪神にあることが発覚。“勘違いドラフト”で結果的には阪神へ入団することに。高山を逃したヤクルトは「1番・中堅」の即戦力候補としてオリックスを退団した坂口氏を獲得することになった。

 2人の運命を変えたドラフト。その後、高山はルーキーイヤーの2016年に134試合に出場し打率.275、8本塁打65打点で新人王を獲得。坂口氏も新天地で141試合に出場し、打率.295で完全復活を果たした。当時を振り返り「多分、高山選手がヤクルトに入っていたら、僕は獲得されてなかったと思います。持っているものは本当に素晴らしい。環境が変われば活躍できることもある」と坂口氏。

 ドラフトも終わり、各球団はこれからFA選手や新助っ人などの戦力補強に入る。トライアウトから合格し契約を勝ち取るのは“狭き門”になるが「攻撃的な布陣でいきたい球団は欲しがるのではないでしょうか。高山選手は代打でいってもそのまま守備に就ける。長く試合に出られる選手だと思います。あとはどれだけ補強ポイントにマッチするか。そこは選手が決められることではないですが、来年も1軍でプレーする姿は見たいですね」と評価した。

 リーグ優勝、日本一を果たした阪神ではチャンスはなかったが、30歳とまだ老け込む年齢ではない。トライアウトで結果を残した高山に吉報は届くのか、注目が集まる。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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