ラオウ歩けず欠席…まさかの代役指名に「えええ?」 他人の表彰式に出た石川亮の“存在感”

オリックス・杉本裕太郎(左)と石川亮【写真:荒川祐史、真柴健】
オリックス・杉本裕太郎(左)と石川亮【写真:荒川祐史、真柴健】

オリックス・杉本がCSのMVP受賞をムードメーカーの石川に託した

 絶妙な人選が、笑顔の輪を広げた。オリックスの“ラオウ”こと杉本裕太郎外野手は石川亮捕手に感謝が尽きない。10月21日に行われたロッテとのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第4戦(京セラドーム)に3-2で勝利し、3年連続の日本シリーズ進出を果たした。杉本は期間中4試合で打率.429の成績を残してMVPに選出されたが、8回の打席で左足を負傷し、走ることができなかった。

「広報の方から(MVPで)表彰されると聞いたんですけど、僕は歩けなかったのでダメだな……と。表彰式に(自分が)出られない状況になって、どうしようかなと考えていたんです。そこで『代役は誰にする?』となったので『石川亮で!』と指名しました」

 今季から新加入したムードメーカーに託した理由は「あんまり表彰されたことないかな?と思ったので(笑)」とお腹を抱える。真剣な表情に戻ると「キャラクターが良いので、和むかなと。僕が怪我をしてしまって、球場もザワザワしていた雰囲気だったので、空気を良くしてくれるかなと思って選びました。本当は自分で受け取りに行きたかったですけどね」と“人選”を説明した。

 石川には「ちょっと、代わりに行ってきてや!」と唐突に伝えた。「頼んだ時は『えええ?』って、最初は恥ずかしそうに嫌がっていました。でも、いざ(表彰式に)本番になるとノリノリで(ボードを)もらっていて面白かったですね(笑)」。患部のアイシングを行うため、ベンチ裏のロッカールームから映像を見守り、ほっこりした気分になった。

大役を務めた石川の存在が「めちゃくちゃ面白い」

 代役を務め終えた石川は「やり切った!」と杉本に報告。3歳下の爽やかイケメンは「ベンチでめっちゃ声を出しますね。去年までは寅威さん(伏見)が引っ張って声を出してくれていたんですけど、いなくなって……。そこにあいつ(石川)が来た。移籍して来たばかりで、その役割はしづらいのかなと思っていたんですけど、人見知りせず、良いムードメーカーになってくれていますね」と選手会長から“お褒めの言葉”をもらった。

 リアクションが大きいことから、まさかのアクシデントもあった。「石川亮が喜びすぎて、振り回した手が、顔に当たったこともあります。かなり痛かったですけど、それよりも(ハプニングが)面白かった方が大きかったですね」。仲間の活躍を誰よりも喜ぶ石川がベンチを明るくする。

「試合中に得点することが楽しくなりました。みんなで思いっきり喜べるので。ただ、あいつ(石川)は自分が打ったかのように喜ぶので、そこがめちゃくちゃ面白いですね(笑)」

 石川は今季14試合の出場だが、持ち前のキャラクターで何度もチームの窮地を救ってきた。11月1日に行われた阪神との日本シリーズ第4戦(甲子園)では9回の好機に代打で登場し、送りバントを決めた。どんなときも必要戦力――。杉本が任せた“大役”は、石川へのご褒美だったに違いない。

○真柴健(ましば・けん)1994年、大阪府生まれ。京都産業大学卒業後の2017年、日刊スポーツ新聞社に入社。3年間の阪神担当を経て、2020年からオリックス担当。オリックス勝利の瞬間、爆速で「おりほーツイート」するのが、ちまたで話題に。担当3年間で最下位、リーグ優勝、悲願の日本一を見届け、新聞記者を卒業。2023年2月からFull-Count編集部へ。

(真柴健 / Ken Mashiba)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY