“師匠”が見た今井達也の成長「感慨深かった」 同じ背番号&登場曲で挑んだ決勝マウンド

西武・武隈祥太氏【写真:湯浅大】
西武・武隈祥太氏【写真:湯浅大】

昨季現役引退の武隈祥太氏が心境吐露…背番号「48」を継承した今井達也との絆

 昨年限りで現役を引退した武隈祥太氏が、「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ 2023」の決勝・韓国戦で、自身の現役時代と同じ背番号「48」を付けて先発した愛弟子の西武・今井達也投手に対して「感慨深い」などと素直な心境を明かした。

 自主トレを共に行うなど武隈氏を心酔していた今井は、昨年11月に行われた同氏の引退セレモニーで号泣しながら花束を贈呈。優しい笑みを浮かべた先輩からハグされる温かい光景はファンの涙も誘った。その年のオフ、右腕はエース格ともいえる背番号「11」から“師匠”の背番号「48」への変更を球団に直訴。新たな思いを背負って臨んだ今季は自身初の2桁勝利となる10勝5敗、防御率2.30の数字を残し、若手中心の侍ジャパンに招集。実績も十分で決勝戦の先発を任された。

 今年から西武の球団本部ファーム・育成グループ付兼バイオメカニクス兼若獅子寮副寮長を担当する武隈氏は、「色々な球団の48番の選手を見てきましたが、今井がジャパンで48番というのは感慨深いものがありました。今井が頑張ったからあの場に立てたということです」。武隈氏は、成長した後輩の姿に思いを馳せた。代表のメンバー発表の際に背番号を知り、「まあ、自分の所属チームの背番号をつけるケースが多いので、大きい数字は他の選手とかぶることもなかったのかな」と笑った。

 大一番のマウンドを任された背番号48は、やや制球に苦しみ4回5安打2失点。2四球や味方の失策など77球を要する粘りの投球となったが、大崩れすることなく後続の投手へバトンを託した。武隈氏はプレーボールからは試合を見ることができなかったそうで「気づいたら球数をたくさん投げていた。でもそんなところも今井らしくて良かったですよ。あの長いピッチングは」と頷いた。

決勝・韓国戦に先発した侍ジャパン・今井達也【写真:荒川祐史】
決勝・韓国戦に先発した侍ジャパン・今井達也【写真:荒川祐史】

シーズン途中から使っていた登場曲を大一番でも…「思い入れがあるのか」

 試合開始を見られなかったということは、今井が人気シンガーソングライターのナオト・インティライミの「Life pallet」に乗ってマウンドに上がった姿も見られなかったということ。やはり武隈氏が現役時代に登場曲として流していた楽曲で、今井は今季シーズン途中から同曲を使用し成績が急上昇していた。「(知人からの)LINEがきて知りました。そこまで流さなくてもいいのかなと思ったけど、思い入れがあるのか、あの曲にしてから成績も上がっていきましたからね。たまたまでしょうけど」と謙遜しつつも、健気な後輩の心意気には嬉しそうだった。

“師匠”は早めの降板となったことに「悔しい内容だったと思う」と心中を思いやる。それでも「またトップチームに呼ばれるように頑張ってほしいですよ。これからの選手ですから。次もあると思うので楽しみです。まずは今年1年間、お疲れさまでした、という感じですね」と労った。ロン毛の師弟コンビは固い絆で結ばれていた。

○著者プロフィール
湯浅大(ゆあさ・だい)
東京都生まれ。成城高、法大を経て1997年に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでサッカー、芸能、野球を担当。主にMLB、DeNA、西武などを取材した。2023年11月からFull-Count編集部に所属。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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