まさかの戦力外に呆然「素行ですか?」 号泣しながら親に電話…SNSも開けない失意の日々

元DeNA・大橋武尊【写真:町田利衣】
元DeNA・大橋武尊【写真:町田利衣】

2021年育成ドラフト3位で入団した大橋武尊は今季限りで戦力外となった

 DeNAを今季限りで戦力外となった大橋武尊外野手は、メキシカンリーグのアグアスカリエンテス・レイルロードメン入りすることが決まった。2021年育成ドラフト3位で入団。支配下を掴めなかったとはいえ、わずか2年での戦力外は、自身にとっても「正直信じられない」という出来事だった。

 10月2日の夜、スマートフォンが鳴った。球団関係者からの電話は「何の連絡かなって全然わからなくて」。しかし「『スーツで来て』と言われた瞬間に、もしかしたらなと……」と事態を察した。

 それでもまだ、どこかに希望を持っていた。でもやはり、翌3日に告げられたのは戦力外。現実を突きつけられ、思わず出た言葉は「素行に問題があるんですか?」だった。「なんか『え!?』みたいになっちゃって。『悪いことがあったなら教えてほしいです』と。でもそうじゃないと言われたときに『ああそうか。俺、何もしてねえじゃん』って」と虚無感にかられた。

「一番は悔しさですね。まさか2年でクビになるとは思っていなかったです。しかも7月の終わりくらいから打撃で掴めたものがあって、自分の中でこれで来年勝負しよう、春に絶対に支配下になって1軍で出てやるぞと思っていた。謎に根拠のある自信があったので、志が上にあった分、余計にバーンと突き落とされた感じでした」

2022年のOP戦ではハマスタで快足披露「つま先から脳天まで鳥肌たった」

 寮の自室に戻ると、涙があふれ「号泣しながら親に電話しました」。それでも、そのときには覚悟が決まっていた。「こんなことでやめられない。もっと上にいって、もっと楽しく野球をするから、それまで待っていて」と伝えると、両親は「頑張って」と言葉をかけてくれた。

 ファンからSNSに届くメッセージも「期待を裏切ってしまって本当に申し訳ない」と見ることができなかった。ようやく目にできるようになったのは、約1週間が経った頃。励ましの声や温かい言葉に救われ、次のステージへの糧となった。

 2022年のオープン戦では1軍に帯同し、横浜スタジアムでプレーした。3月3日の広島戦。代走で登場すると、いきなり二盗と三盗を決めた。初打席でも安打を放つなど、2打数2安打2盗塁。強烈なインパクトを残した一戦は「どの試合よりもめっちゃ鮮明に覚えています。今考えるとゾーンに入っている状態で、全て自分の思い通りに動いた。つま先から脳天までゾワーって鳥肌がたって、これはたまらないな、もっと味わいたいって思ってずっと頑張っていました」と大橋にとっても忘れられない瞬間だった。

 2年間を振り返り「ベイスターズというチームが本当に大好き。日本の野球を全く知らなかった僕ですけど、野球の文化というのを深く知ることができました。今考えると、本当にあっという間でしたね」と感謝の言葉を口にする。22歳が次に選んだのは、メキシコでの挑戦。「もちろんベイスターズでやり残したこともありますし、もっとやれたなというのもあります。でも、だからこそメキシコで、新天地で花を咲かせてやろうという気持ちに変わりました」。持ち前の明るさと楽しむ力で、大橋は新たな道を切り拓いていく。

【実際の様子】「ちょっと切なくなる」まっさらになった大橋武尊の寮部屋

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