2軍1試合で戦力外も「これが現実」 厚い“鷹の選手層”…21歳が腐らなかったワケ

戦力外を受けPayPayドームに挨拶に訪れた早真之介【写真:藤浦一都】
戦力外を受けPayPayドームに挨拶に訪れた早真之介【写真:藤浦一都】

現役を引退し、警視庁の採用試験を受ける決断をした元鷹・早真之介

 ソフトバンクから戦力外通告を受けた早真之介外野手は21歳で現役を引退し、警視庁の採用試験を受けることを決断した。3桁の背番号「125」を背負い続けた3年間。2軍ですら1試合の出場にとどまった。総勢120人を超え、4軍制を取る大所帯をどう見ていたのだろうか。

「選手層が厚いからと言って、やる気がなくなるというのは全くなかったです」。明るい声で話す。2021年に京都国際高から育成4位で入団。必死にバットを振ったが、ウエスタン・リーグ公式戦の出場は2022年の1試合に終わった。

 今季、チームは近藤健介、コートニー・ホーキンス、アルフレド・デスパイネら大型補強を敢行。外野手だけでも22人が名を連ねた。支配下の枠は70人。2桁背番号の前に、2軍昇格の壁が立ちはだかった。

 先の見えない不安はあった。ただ、決して腐ることはなかったという。ファーム施設のタマスタ筑後は人工芝の球場に、ナイター設備も完備。3軍用のサブ球場もあり、室内練習場も充実していた。他球団から見てもうらやましい環境。「野球に本当に打ち込めたので、恵まれていたなと思います」。

自主トレを共にした中村晃からは「常に自己責任」「1人で道を切り開け」

 先輩らも優しく、そして厳しく面倒を見てくれた。同じ左投げ左打ちの外野手である中村晃は自主トレを共にし、技術から人間性までたくさんのことを学んだ。中村晃自身も厳しい環境であることを知っているからこそ、「常に自己責任」「1人で道を切り開け」と早に言い聞かせていたという。現役引退を伝えたときも「『この世界は仕方ないことやな』って感じで、前向きに次の道へ送り出してくれました」と振り返る。だからこそ、きっぱり野球から離れる決断もできた。

「3軍で抜群の成績を残していれば、(2軍に)上がれたはずなので。野球に本気で向き合ってきたので、上がれなかったのはこれが現実だと思っています」。結果がすべての世界。これまでにも現メッツ・千賀滉大投手ら育成出身選手が1軍で活躍している。言い訳なんて全くない。

 日の目を見ることは叶わなかったプロ野球人生。「両親に活躍する姿を見せられなかった悔しさもあります」。それでも「(ソフトバンクで)競争してきた経験は必ず生きると思っている」。受験する警視庁の採用試験は倍率5〜6倍と狭き門。それでも120人超の大所帯でもがき苦しんだ経験を武器に、必ず突破して見せる。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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