試合開始直後に見せた“積極性” ハム新人内野手、異次元の「3秒71」…1番定着に期待

日本ハム・奈良間大己【写真:矢口亨】
日本ハム・奈良間大己【写真:矢口亨】

先頭打者が試合開始からバットにボールが当たるまでの時間を計測

 面白いことを思いつくよね、“パテレ”のスタッフさんたち──。今回のテーマは「爆速ヒットパレードTOP5」。試合開始直後の先頭打者がヒットを打った打席で、プレーボールのコールからバットにボールが当たるまでの時間のことだ。「炎のストップウオッチャー」を名乗らせてもらっている筆者も思いつかなかったプレータイムだが、ランキングに入ってくる先頭打者たちの早打ち傾向の特性をつかめるという意味では、真面目な目線でも興味深い。

 6秒40というタイムで5位にランクインしたのは楽天・小深田大翔内野手。低めのストレートをしっかりとしたスイングでとらえ、打球速度のあるゴロで一二塁間をきれいに抜くヒットとなった。試合開始早々、あっと驚くような会心の大飛球が出るのもいいが、“判で押したような”定番のヒットをいとも簡単に打って幸先よくチャンスをつくることは、143試合という長丁場を戦うプロ野球のトップバッターに課せられた大事な仕事の一つだろう。

 プレーボールからわずか5秒94後のこと。現在の日本球界で最も攻略が難しい投手の一人といえるロッテ・佐々木朗希投手の初球を一閃、見事に二塁打で出塁したのは、4位の西武・外崎修汰内野手である。最速165キロを誇る日本人最速男が投じるストレートを一振りで仕留めて左中間を抜くとは。この一打が、西武ベンチに勢いを与えたのは間違いないだろう。外崎の職人然とした打撃技術と、初球から狙いにいった勇気には、惜しみない拍手を送りたい。

 3位にランクインしたのは、日本ハムのルーキー・奈良間大己内野手の5秒57というタイムだ。筆者は奈良間の常葉大菊川高、立正大でのプレーをところどころで見てきたが、高校時代に高校球児がそう簡単には記録することができない「フライの滞空時間6秒台」を記録。1番打者でありながらパンチ力も兼ね備えたタイプという印象が強かった。加えて、ファーストストライクを積極的に強振していく積極性も当時から売りの一つとしており、今回の爆速タイムに奈良間の一番のセールスポイントが発揮されたプレーだと感じられた。

 3位の奈良間と同じくルーキーの、それも育成契約からスタートして初年度から支配下契約を勝ち取り、今シーズン序盤に大活躍したオリックス・茶野篤政外野手が5秒24というタイムで堂々2位に入った。やはり、ルーキーはがむしゃらにプレーするから、ファーストストライクに迷いなく手を出していく積極性が、2年目以降の選手よりもあるということか? 初球のスーッと入ってきたカウント球を逃さず、体が勝手に動いたかのような流麗な流し打ちで見事レフトへ運んだ一打だった。

番外編は目を疑う数字…とにかく食らいついた「2分53秒63」

 番外編では驚異の粘りで記録した最長タイムを紹介する。楽天・村林一輝内野手の2分53秒63! おいおい、今までこんな長いのが登場したことがあったか? と目を疑う数字で、今回の「短い時間でヒットを打った」選手たちとは対極をいくプレーというわけだ。もともとは守備や代走で出場機会を地道に積み上げていた村林だが、6月下旬からスタメンに名を連ねると、7月には1番に固定された。ようやく巡ってきたチャンスで、1軍の投手を相手にとにかく食らいつく打撃を披露。それを象徴していたのがこのシーンだった。

 すでに3位入賞を果たしていた奈良間が再び登場。「爆速ヒット」の初代王者に輝いた。初球のストレートを得意の積極打法で振り抜き、左中間を突破する二塁打とした好プレー。注目すべきはこのときの3秒71というタイムである。3位となった自身の5秒57、そして2位の茶野の5秒24をも大きく引き離す断トツのスピード記録なのだ。

 ここまでくると、打者だけでどうにかなるものではない。先発マウンドにいた西武・平良海馬投手が元来持つ投球テンポの速さも加わって生まれた奇跡のコラボレーションと言っていいだろう。テンポ良くどんどん投げ込んでいくタイプとして知られている平良と積極打法の奈良間は、どうやらお互いのリズムが合うようだ。

 来シーズン以降は当然、お互いのリズムを崩し合う駆け引きが展開されることも予想されるが、マイペースな平良が自分のリズムを変えてくるというのも考えにくい。そして同じく、今シーズンはたった10試合しか1番打者としてスタメン起用されていないにもかかわらず、1位と3位のダブル入賞を達成した奈良間の積極打法もブレることはないだろう。となれば、この2人。来年以降も「プレーボール直後の初球」を巡ってガチンコ勝負を繰り広げる“宿命のライバル”になるのではないか? 密かにそんな期待感が込み上げてきた。

 来季はもっと速い「爆速ヒット」が見られるだろうか? 年も明けていないというのに、早くも次の開幕が待ち遠しくなってきた。

(「パ・リーグ インサイト」キビタキビオ)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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