20歳逸材は衝撃の「0.59」、地獄の12連敗から覚醒した左腕…有望株ひしめく西武投手陣

西武・隅田知一郎(左)と豆田泰志【写真:荒川祐史、矢口亨】
西武・隅田知一郎(左)と豆田泰志【写真:荒川祐史、矢口亨】

今季の西武は高橋、今井、平良が2桁勝利をマーク

 西武は今季、65勝77敗1分けで5位に終わった。開幕直後は好調も交流戦で6勝12敗と苦戦し、7月前半には8連敗。それでも9月には14勝10敗と勝ち越し、来季へ希望を感じさせた。チーム防御率はリーグ2位の2.93。先発では高橋光成投手、今井達也投手、平良海馬投手が2桁勝利をマークした。

 3年連続の開幕投手に指名されたのは高橋。開幕戦では勝敗つかずも8回1失点と力投し、その後は自身3連勝と好調な滑り出しを見せた。4月22日のオリックス戦では今季初完投も記録した。3年連続2桁勝利をクリアし、10勝8敗、防御率2.21(リーグ2位)、シーズン4完投(同1位)、2完封(同2位タイ)をマーク。規定投球回到達も4年連続で、先発としてフル稼働した。

 今井は、昨年現役引退した武隈祥太氏が背負っていた「48」に背番号を変更。シーズン初戦で白星を手にし、4月13日のロッテ戦では8回途中まで無安打投球の快投で完封勝利。6月は再調整に費やしたが、7月4日に1軍復帰すると、3勝0敗、防御率0.62で自身初の月間MVPを受賞した。最終的に10勝5敗、防御率2.30の成績を残した。与四球数は「61」とリーグ最多タイながら、被打率は.192と100イニング以上投球した投手の中で最も低く、“荒れ球”が効果を発揮したといえる。

 2022年シーズンは最優秀中継ぎに輝いた平良は志願の先発転向。4月11日のロッテ戦で6回2失点と好投し、先発としての1勝目を挙げた。3年連続でオールスターへ出場。規定投球回にも到達した。チームトップの11勝を挙げ、防御率2.40、リーグ3位の153奪三振をマークした。

 確かな成長を感じさせたのは、2年目の隅田知一郎投手。昨季はプロ初登板で白星をあげるも、そこから自身12連敗。勝利が舞い込んできたのは4月19日のソフトバンク戦で、6回1失点の粘投を見せ“プロ2勝目”をマークした。8月9日の日本ハム戦では5安打11奪三振の力投でプロ初の完封勝利。22登板で9勝10敗、防御率3.44、128奪三振を記録した。昨季、2桁勝利をマークした與座海人投手とディートリック・エンス投手はあわせて3勝止まり。松本航投手は20登板で6勝8敗、防御率3.47だったが、全体としては安定していた先発陣だった。

育成3年目の豆田は7月下旬に支配下へ…16登板で防御率0.59と活躍した

 リリーフ陣は苦戦した。昨季安定感を誇った水上由伸投手、増田達至投手が春先から不調。増田は40試合で防御率5.45、19セーブにとどまった。水上も調整を経て再合流したのは7月以降。23試合で防御率2.12、5ホールドだった。一方、平井克典投手はチームトップの54登板で4勝3敗、28ホールド、防御率2.55。オフにはFA宣言するも、残留を決断した。平井に次いで登板が多かったのは、今季からリリーフへ転向した佐藤隼輔投手。5月までは防御率1点台を維持し、一時はセットアッパーを任されることも。47登板で防御率2.50、18ホールドを記録した。

 序盤のブルペンを支えたのは森脇亮介投手と佐々木健投手だったが、途中で無念の離脱となった。7月までに31登板で防御率1.95、12ホールドを挙げていた森脇は右上腕動脈閉塞症が判明。手術を受けて長期離脱となった。21登板で防御率0.87と存在感を示した佐々木も左肘を痛め、メスを入れた。後半戦で活躍したのは田村伊知郎投手だ。9月には11試合で防御率0.79をマーク。7月下旬に加入したブルックス・クリスキー投手も14試合で防御率1.93とブルペン陣を支えた。

 若獅子の活躍も光った。ドラフト4位ルーキー・青山美夏人投手のプロ初登板は開幕戦。セーブシチュエーションでの登板で、同点弾を浴びるほろ苦いデビューとなった。4月2日にプロ初セーブを記録、その後も1軍に帯同し、39試合で防御率2.96と存在感を示した。育成の3年目20歳・豆田泰志投手は、7月下旬に支配下へ。デビューから8試合連続無失点など好投を続け、8月15日には初ホールド、10月3日には初セーブもマーク。16試合で防御率0.59と来季へ期待を抱かせた。

 それぞれが力を示した2023シーズン。28登板で複数イニングもこなしたボー・タカハシ投手は、渡辺久信GMから先発への挑戦が明言されている。ドラフトでは武内夏暉投手(國學院大)を3球団競合の末に獲得。来季もリーグトップクラスの投手陣で、優勝への礎を築けるか。

(「パ・リーグ インサイト」谷島弘紀)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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