移籍で驚き…中日ナインは「仲悪いの?」 移動中に若手の沈黙、理解した“文化の違い”

中日時代の大嶺祐太氏【写真:小西亮】
中日時代の大嶺祐太氏【写真:小西亮】

元ロッテ投手の大嶺祐太氏、中日移籍で経験した“別の世界”

 千葉から名古屋へ。パ・リーグからセ・リーグへ。2022年に現役を引退した元投手の大嶺祐太氏は、2021年にロッテを戦力外になった後、2022年に育成選手として中日に入団した。ロッテから球団スタッフとしての打診があったが、別の世界を見てみたいと決断。大きな環境の変化は、今後の人生への糧となった。

 わずか1年でも、中日で過ごした日々は驚きの連続だった。「キャンプ初日に、クラブハウスで誰もしゃべっていないんです。思わず、同級生の大野(雄大投手)に『みんな仲悪いの?』と聞いてしまいました(笑)」。空港へ向かう車中の様子も、ロッテとは大きく異なっていた。

「みんな自主トレを色々なところでやってきているので、ロッテでは『久しぶり。どこで何してたの?』と、至る所で野球の話が飛び交っていました。でも中日は、誰ひとりしゃべっていないんです。近くに大野や柳(裕也投手)がいる。アドバイスを聞き放題なのに、なんで聞かないのだろうと思いました。若い選手には『あんないいお手本がいるのに、聞きに行けばいいじゃん』って言ったんですけど『先輩にそういうこと(移動中に助言を求めること)は失礼にあたるから行けません』って言うんです」

 決して仲が悪いわけではなく、それが中日カラーなのだと理解した。組織として上下関係や礼節を重んじる。一方のロッテは、選手の自主性を重んじていた。若い選手が意見することも多かったが、そこに疑問を抱くこともあった。人によっては中日を“古い”と感じ、ロッテが“自由すぎる”と思うかもしれないが、どちらかだけが正解でないのもわかった。

若手に伝えた思い「辞めるときは誰も責任を取ってくれない」

「ロッテで当たり前だったことが、中日では当たり前じゃない。ロッテの良さ、中日の良さがわかりました」

 中日の伝統を重んじた上で、1軍を目指す若手には自身の思いを伝えたつもりだ。「後輩がアドバイスを求めて、教えない先輩はいません。『聞きに行け』と言っても行けない。『もったいないな』と思いました」。自分で考え、選び取ってきた16年間のプロ人生だと胸を張って言えるからこそ、言葉に熱が帯びる。

「誰かに言われたことをやるのではなく、自分で行動したほうがいい。辞めるときは誰も責任を取ってくれません。誰かのせいにするのではなく、自分の信じたことをやり切って、それでダメでも悔いは残らないと思います」

 中日では支配下登録されることなく1年で戦力外となり、現役を引退した。だが、ロッテとは違う世界を見ることができた名古屋での1年間を「楽しかったです。勉強になりました」と振り返る。第2の人生は飲食業を選び、今年8月に創作ダイニングの料理店を都内にオープンさせた。まだ35歳。16年間のプロ野球人生で得たものを糧に、野球界とは全く異なる世界で挑戦を続けていく。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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