激痛に耐えて…34歳ベテランがトップ「73」 貢献度に直結、長期離脱なしの“頑丈さ”

楽天・鈴木大地(左)とロッテ・中村奨吾【写真:小林靖】
楽天・鈴木大地(左)とロッテ・中村奨吾【写真:小林靖】

チャンスメーク能力も…直近6シーズンの死球数ランキング

 出塁率の算出には、安打・四球に加えて死球も計算式に含まれる。そのため、死球を多く受ける傾向にある選手は、それだけチャンスメーク能力に優れている、という見方もできるはずだ。近年のパ・リーグにおける「死球の多い選手」たちは、どのような顔ぶれだったのだろうか。今回は、直近6シーズンにおける死球数のランキングと、同期間内における累計の被死球が多かった選手たちについて、実際のデータをもとに紹介していきたい。

 2018年に中村奨吾が記録したシーズン22死球は、NPB歴代5位タイの数字だ。シーズン20死球以上を記録したのも2008年の渡辺直人以来であり、近年では突出した多さとなった。また、2位の鈴木大地が17死球、3位の山川穂高が16死球と、直近6年間の中でも特に死球が多い年となっていた。またランキングの上位3選手はいずれも全試合出場を達成しており、多くの死球を受けながらも故障離脱とは無縁だった。

 2019年は、来日1年目ながら33本塁打、95打点と活躍したジャバリ・ブラッシュが、17死球でトップに立った。両足を閉じ、水平に構えたバットを投手に向ける独特のバッティングフォームでも知られた選手なだけに、特異なフォームが死球の多さに影響した面はありそうだ。鈴木は2位、山川は3位と、いずれも前年と同じ順位を維持。中村剛也も12個の死球を受けて4位に入った。さらに、わずか54試合の出場で11四球と、圧倒的なペースで死球を積み上げた宗佑磨の台頭も目につくところだ。

 2020年は、前年に52試合で7個の死球を受けたレオネス・マーティンが、初のフルシーズンで17死球を記録してリーグトップに。足を大きく開いて構えるオープンスタンスの持ち主なだけに、前年のブラッシュ同様、独特のフォームが死球の避けにくさにつながったと考えられる。また、全120試合の短縮シーズンだったことも影響してか、ランキングの常連である中村と鈴木はやや数字を減らした。そんな中で、山川は13死球と引き続き一定以上のペースで死球を受けており、相手バッテリーの厳しい攻めに遭ったことがうかがえる。

鈴木大地は現役選手で3位の122死球、同2位の青木宣親と1差

 2年連続で80試合未満の出場ながらランキングのトップ10に入っていた宗が、2021年はついにレギュラーに定着し、リーグトップの死球数を記録。また、2018年に78試合で9死球を記録していた荻野貴司が、プロ12年目にして初の全試合出場を達成。それに伴い、死球数もトップと1個差のリーグ2位まで増加している。3位には中村、マーティン、杉本裕太郎、T-岡田と、激しい優勝争いを繰り広げたオリックスとロッテの選手たちが並んだ。

 2022年は、過去2シーズンは死球数が減少傾向にあった鈴木が、自己最多タイの18死球を記録。同じく18死球を受けた2017年以来、5年ぶりとなる戴冠を果たした。また、2位には山川、杉本、マーティンといったおなじみの顔ぶれに加え、新たに辰己涼介も加わった。中村は新型コロナウイルス感染の影響で連続試合出場が630でストップしたが、それでも直近5年間で4度目の2桁死球を記録。前年はリーグ1位だった宗は9位タイの8死球とやや数字を減らした。

 2022年にリーグ2位タイの11死球を受けた辰己が、2023年も12死球と数字を伸ばし、自身初のリーグ最多死球を記録。また、パ・リーグ1年目のアリエル・マルティネスがそれに次ぐ11死球を記録しており、相手バッテリーからも一定以上の警戒を受けていたことがうかがえる。ランキング常連の鈴木と中村がいずれも1桁に数字を減らす一方で、マルティネスに加えて新人の茶野篤政も8個の死球を記録した。

 最後に、今回のランキングに一度でも名前が載った選手たちの中で、直近6年間の合計死球数が上位10人に入った選手たちを紹介したい。鈴木は直近6年間で73個の死球を記録し、該当期間で最も多くの死球を受けた選手となった。通算の数字においても、現役選手の中では3位となる122死球を記録。同2位の青木宣親(123死球)との差はわずか1個であり、来季中の2位浮上も期待できそうだ。

マーティンはNPB在籍3年半にもかかわらず340試合で45個の死球を受けた

 鈴木に加え、中村、山川の3人が、直近5シーズンで60死球の大台を突破している。この3人は直近6年間における出場試合数も600試合を超えており、多くの死球を受けながら、それによる長期離脱を経験していない点もポイントだ。

 マーティンはNPBへの在籍が3年半と他の選手に比べて短かったにもかかわらず、わずか340試合で45個の死球を記録。また、レギュラー定着が2021年と比較的最近だった宗、キャリアを通じて故障離脱が多かった荻野も40個以上の数字を記録しており、両選手の死球を受ける割合の高さが示されている。

 出塁率は、打者としての能力を示す「OPS」をはじめとする、各種の指標にも影響を及ぼす数字だ。すなわち、死球が多い選手は、それだけチームの得点力向上に貢献しているという見方もできることになる。もちろん、死球の影響で怪我を負って戦線離脱する事態となればチームにとっては痛手となる。そのため、死球ランキングで上位に入るには、死球を受けた際に大きな故障をすることなく、シーズンを戦い抜ける故障への強さも必要となってくる。

 果たして、来たる新シーズンの死球数ランキングで上位に入る選手は、どのような顔ぶれになるのだろうか。相手バッテリーの攻めの厳しさや、チャンスメーカーとしての貢献度に直結する“死球の多さ”という概念に、今後はぜひ注目してみてほしい。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY