「誰が見ても戦力外」4年6億円→若手と下積み生活 2人部屋に洗濯…35歳で戻った原点

くふうハヤテ・福田秀平【写真:間淳】
くふうハヤテ・福田秀平【写真:間淳】

元ソフトバンク、ロッテの福田秀平が「くふうハヤテベンチャーズ静岡」入団

 野球ができる喜びと感謝をプレーに乗せる。ソフトバンクとロッテでプレーし、今季からNPB2軍のウエスタン・リーグに新規参入する「くふうハヤテベンチャーズ静岡(略称=くふうハヤテ)」の福田秀平外野手が右肩の怪我を乗り越えて、再び躍動する姿を見せようとしている。NPBとは環境が大幅に変わる2人部屋の合宿所生活もバス移動の遠征も財産に変える。

 顔や言葉に喜びがにじむ。11日から始まったチーム合同練習。新チームとあって選手たちに緊張感や戸惑いがある中、福田の表情は明るい。野手最年長の35歳。率先して声を出して場を盛り上げ、年齢がひと回り以上離れた選手とも同じメニューをこなす。

 2019年オフにFAでソフトバンクからロッテに4年総額6億円(金額は推定)で移籍した福田は、NPBの第一線でプレーしていた。ただ、昨季のオフに不完全燃焼のまま戦力外通告を受けた。

「誰が見ても戦力外になる成績です。FAで移籍して4年間、数字を残せませんでしたから。ショックはなかったですね」

 ロッテ1年目の2020年、死球で右肩甲骨を骨折した。復帰後も“後遺症”に悩まされ、2022年オフに手術。昨季は3試合の出場にとどまり、戦力外となった。引退も頭をよぎったが、このままでは終われない気持ちが上回った。幸い、右肩の状態は回復に向かっていた。

「怪我をした右肩の治療に色んな方が関わっています。ドクターだけで5人、トレーナーも数えきれないくらいの方々にお世話になりました。ロッテのスタッフも応援してくれました。昔のようには投げられないかもしれませんが、皆さんのおかげで野球ができるくらいには回復したので、もう1度プレーしたいと思いました」

くふうハヤテ・福田秀平【写真:間淳】
くふうハヤテ・福田秀平【写真:間淳】

NPB復帰を目指しつつ「静岡県の方々に愛される球団にしていくお手伝いを」

 支えてくれた家族やお世話になった人たちに、プレーしている姿を見せたい。再スタートを切るにはふさわしい球団の誕生も、前向きになる要因となった。今季からウエスタン・リーグに参加するくふうハヤテは、全てが一からのスタート。福田は「野球人生が終わってからも自分の財産になると考えました。寮生活も自分からやろうと思いましたし、若い選手と切磋琢磨しながら勉強したくてハヤテを選びました」と語る。

 NPBの1軍にいた頃とは環境が一変する。現在は、10歳年下のチームメート増田将馬外野手と2人部屋の合宿所で暮らす。自分で洗濯し、食事を終えたら食器も洗う。シーズンが始まれば、敵地での試合は新幹線や飛行機ではなく、長時間バスでの移動となる。それでも、「ソフトバンクも2軍のキャンプは2人部屋でした。18歳でプロ入りした頃を思い出しながら、楽しんでいます」と笑う。

 35歳になっても、上のレベルを目指す気持ちは衰えていない。チームとしては勝利を求め、個人ではNPB復帰を目標に掲げる。ただ、何よりも野球ができるようにサポートしてくれた人たちや、チャンスを得た静岡との縁を大切にしている。

「選手である以上、もちろんNPBでもう一度プレーしたい思いはありますが、ハヤテをすぐに出たいというのも違います。せっかく縁をいただいたので、静岡県の方々に愛される球団にしていくお手伝いをしたいと思っています。高いレベルを目指して結果的にNPB復帰という道があるかもしれませんが、この先に何があるかは分かりません」

 成功の証とも言われる1億円プレーヤーを経験し、怪我でパフォーマンスを発揮できない歯がゆさも味わった。激しい浮き沈みを経て、たどり着いたのは当たり前にプレーできる楽しさと周囲への感謝。大きな怪我を乗り越えた福田が野球の原点を体いっぱいに表現する。

(間淳 / Jun Aida)

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