順位を分かつ“1点の重み” 一目瞭然…なぜオリックスが強く、日本ハムが最下位なのか

オリックス・中嶋聡監督(左)と日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】
オリックス・中嶋聡監督(左)と日本ハム・新庄剛志監督【写真:荒川祐史】

各球団の1点差試合を分析…オリは勝率1位に

 ファンの目線で見たとき、1点差のゲームは非常に盛り上がる一戦と言って間違いないだろう。ハラハラ、ドキドキした分、勝利のうれしさはひとしおで、敗れたときはより一層悔しさを感じる。昨季のパ・リーグでは、1点差で決着した試合が157試合あった。全483試合の3割以上を占めており、多少なりともシーズンの行方を左右していたと言えそうだ。

 上位4チームの1点差ゲームの勝率は、シーズン勝率を上回っている。今回はさらに、1点差ゲームの試合展開に応じて2パターンに分類。勝利した試合を「逃げ切り」または「逆転勝ち」、敗れた試合を「追い上げ及ばず」または「逆転負け」に分けて各球団の戦いぶりを見ていく。

○オリックス
1点差ゲーム勝率.683(28勝13敗)
・「逃げ切り」14勝、「逆転勝ち」14勝
・「追い上げ及ばず」7敗、「逆転負け」6敗

 リーグ3連覇を達成したオリックスは唯一、6割を超える1点差ゲーム勝率を記録。リーグ最多タイとなる28勝、同最少の13敗にとどめた。内訳を見ても、「逃げ切り」と「逆転勝ち」、「追い上げ及ばず」と「逆転負け」の数に大きな差はない。守り勝つ野球、打ち勝つ野球のどちらにも対応できているということだ。リーグトップのチーム防御率に代表されるように、投手力の高い印象が強いが、打撃面でも打率や本塁打数、長打率といった指標で1位となっている。投打ともに隙のないチームだということが、1点差ゲームの内容からもうかがえた。

○楽天
1点差ゲーム勝率.565(26勝20敗)
・「逃げ切り」13勝、「逆転勝ち」13勝
・「追い上げ及ばず」7敗、「逆転負け」13敗

 シーズンでは4位に終わった楽天だが、1点差ゲームの勝率はリーグ2位の数字を残した。1点差ゲーム勝率とシーズン勝率との差はリーグで最も大きく、「昨季最も接戦で力を発揮したチーム」だと言えるだろう。とはいえ、逆転負けの数が突出している点は見逃せない。楽天は、チーム防御率が2年連続でリーグ最下位と投手力が課題。リードを守り切れない展開が多くあった。そんななか、ルーキーながら51試合に登板し、防御率2.40という好成績を残した渡辺翔太投手、先発として5勝を挙げた荘司康誠投手といった新戦力が台頭。逆襲への準備が着々と進められている。

○ロッテ
1点差ゲーム勝率.549(28勝23敗)
・「逃げ切り」11勝、「逆転勝ち」17勝
・「追い上げ及ばず」15敗、「逆転負け」8敗

 ロッテは、シーズンからは1つ順位を落とし、1点差ゲーム勝率では3位に。7月に5試合続けて1点差ゲームをものにするなど、オリックスに並ぶ28勝を挙げたものの、敗戦数が足を引っ張った。敗戦のうち、特に「追い上げ及ばず」の割合が約65%と大きい。「逆転勝ち」も60%超を占めていることから、早い段階で相手に得点を許して追いかける展開、先発投手が試合をつくれないケースそのものが多いという可能性が高い。ロッテにとって、2023年は先発投手の不足に苦しんだ年。「パーソル CS パ」でもブルペンデーを敢行したほどだった。先発陣が充実すれば、さらなる高勝率も見えてきそうだ。

西武になかった逆転力…低迷の要因にも

○ソフトバンク
1点差ゲーム勝率.524(22勝20敗)
・「逃げ切り」11勝、「逆転勝ち」11勝
・「追い上げ及ばず」10敗、「逆転負け」10敗

 ソフトバンクも、シーズン順位から1つ下げる4位となった。それでも、シーズン勝率よりは高い勝率をマークしている。特徴的だったのが、逆転負けを喫した10試合。このうち、9試合が7月以降に集中していた。昨季は先発投手の早期降板が目立ち、パ・リーグで唯一、規定投球回到達者不在。そのため、後半戦に逆転負けが増えたのは、春先からチームを支えた救援陣の疲労が影響したと考えられる。7月1日を最後にリバン・モイネロ投手が離脱してしまったことも大きいだろう。

○西武
1点差ゲーム勝率.375(18勝30敗)
・「逃げ切り」12勝、「逆転勝ち」6勝
・「追い上げ及ばず」14敗、「逆転負け」16敗

 西武の1点差ゲーム勝率は4割を下回り、リーグ勝率からは大きく離れた数字となった。2018、2019年にリーグ連覇を達成した際は、1点差の試合でも勝ち越しており、2018年には7割を超える勝率を見せていた。接戦を勝ちきれなくなったことが低迷の一因になっているようだ。「逆転勝ち」数は「逃げ切り」の半分にとどまり、6勝はリーグ最少。昨季は得点圏打率がリーグ最下位の.220、本塁打数もリーグで唯一の2桁台に落ち込んだ。

○日本ハム
1点差ゲーム勝率.354(17勝31敗)
・「逃げ切り」6勝、「逆転勝ち」11勝
・「追い上げ及ばず」15敗、「逆転負け」16敗

 日本ハムも、1点差ゲーム勝率が3割台という結果に。17勝、31敗はともにリーグワーストだ。夏場には7試合連続で1点差負けを記録するなど、あと1点が遠いシーズンを過ごした。試合内容に目を向けると、西武とは対照的に「逆転勝ち」が多い一方、「追い上げ及ばず」という敗戦も目立つ。25本塁打を放ち、本塁打王まであと一歩に迫った万波中正外野手や、2022年の首位打者・松本剛外野手らを中心とした野手陣には爆発力があったが、やはり打線は水物。チーム別打率、得点数も下位に沈んでいるように、安定した強さを発揮することは難しかった。

 1点差ゲームを2パターンに分類することで、バランスの取れたチームや、うまくかみ合わない要素があったチームなど、球団ごとのさまざまな特色、課題が見えた。接戦の試合を観戦するとき、その展開にまで注目してみると、意外な発見があるかもしれない。

(「パ・リーグ インサイト」吉村穂乃果)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY