比嘉幹貴が「もう言いません…」 開幕投手に立候補も“即却下”…41歳が挙手した理由

オリックス・比嘉幹貴【写真:小林靖】
オリックス・比嘉幹貴【写真:小林靖】

オリックス・比嘉幹貴、プロ413登板も「1回も先発したことがないんです…」

 蝶のように舞い、蜂のように刺す。ピンチのマウンドでも、緊急登板でも顔色を変えることなく颯爽とマウンドに登場。“任務”を遂行し、風のように去ってくのがオリックスの最年長右腕、比嘉幹貴投手だ。

「冗談でも、もう言いませんよ……。まさか記事になるとは思わなかったんです」と41歳が誓ったのが「開幕投手」への名乗りだった。2023年春の宮崎キャンプで、2年連続して開幕投手を務めて来た山本由伸投手(ドジャース)がワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に参戦するため“本命”が不在だった。

 誰が開幕投手に指名されるのか注目の中、中嶋聡監督が「(チャンスなので)立候補するなら、した方がいい」とメディアに発言。これを知った比嘉が、指揮官に“即”立候補した。ベテランが先陣を切ったものの、続く志願者がいないままキャンプ終盤に時は流れた。

 すると、比嘉にとっては予想外の展開が待ち受けていた。インタビューで開幕投手に立候補した投手について問われた中嶋監督が「比嘉ですね。比嘉がいこうかな?と(言っていた)」と明かし、即座に「却下しました(笑)」と続け、周囲は爆笑の渦に包まれた。

41歳になっても「もっとスピードボールを投げたい」

 チーム最年長投手は真顔で「僕、1回も先発をしたことがないんです……」と訴えかけた。救援で居場所を掴んできた変則サイド右腕にとって「開幕投手」は悲願のように思えたが、実は本意ではなかった。「うちの選手はおとなしいですからね」と、若い投手陣を奮起させる狙いがあったのだ。

 比嘉は昨季31試合に登板し、2勝0敗。防御率2.25でリーグ3連覇に大きく貢献した。「チームとしては目標の3連覇ができたのですごく良い年だった。でも、もう1つの目標の日本一ができなかったので、あの1週間は残念だったと思います。自分の中では『ぬるい1年』だったな、というのがあって……。いろいろ試行錯誤しながらやって来たんですがね。抑えられる時もありましたが、打たれる時の方が多かったです」。今季に目指すは、4連覇と日本一奪還。そして、自身のさらなるレベルアップだ。

「もう、全部抑えたいというか……。もっとスピードボールを投げたいし、防御率も0.00に近づけたい」。体力的な数値の解析結果を受け「まだまだ伸びしろがある」と胸を張る比嘉は、シーズン中もジムに通い自己鍛錬を怠ることはない。“オジサン”の奮闘は、若手を発奮させる。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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