出場機会ゼロも…飛び込んだ歓喜の輪 21歳・元謙太が浴びた美酒に映った“覚悟”

オリックス・元謙太【写真:北野正樹】
オリックス・元謙太【写真:北野正樹】

オリックス・元謙太「その場にいないと味わえないものがある」

 あの時の悔しさは忘れない。昨年9月20日、オリックスの元謙太外野手は、チームが本拠地・京セラドームでリーグ3連覇を決めた瞬間を目に焼き付けた。プロ3年目の昨季、1度も1軍に昇格することなく、チームの勝利に貢献することはできなかった。それでも、どうしてもその場に立ち会いたかった。
 
「その場にいないと味わえないものがある、とプラスに考えて、京セラに行きました。いろんな考えはあるでしょうが、深くは考えず、経験できる時にはした方が良いと思いました」。深く考えなかったと言うのは、照れ隠し。「1軍の戦力になりたいと思ってやってきた1年」で、目標は達成できなかったが、自分の現在地を確かめる狙いがあった。

 中京高2年時に夏の甲子園で満塁本塁打を放つなど、4強入りに貢献。2020年ドラフト2位でオリックスに入団した。プロ1年目にウエスタン・リーグの全112試合に出場。1軍デビューを果たした2022年はプロ初安打、初打点と勝負強い打撃をアピールした。3年目の昨季は外野手に転向も、ウエスタン・リーグで89試合に出場し、打率.232。1軍昇格をすることはできなかった。
 
「やっぱり、1軍でプレーすることで得ることはあるので、上がれるなら上がった方が良いと思います。でも、下(2軍)でも良い経験はさせてもらい、良かったと思う部分がほとんどです。プラスだったと思うことばかりで、マイナスだったと思ったことはありません。誰が何と言おうと、成長しているという実感があります」

 胸を張れる数字がある。昨季2軍で開幕から1割台が続いた打率を、8月初旬には2割7分近くまで引きあげたのだった。春季キャンプで中嶋聡監督から「すり足にしてタイミングをとってみたら?」とアドバイスを受け、高橋信二打撃コーチの指導で形ができ上がってきたのだった。

 今オフから取り組んでいるのが「体幹と左脇を使い、軸で飛ばす打撃」だ。「全身でバットを振るのではなく、体幹と左脇を意識するんです。打撃フォームはそう変わらないと思います。意識の問題です」と狙いを語る。
 
「自分の立場だと、キャンプの紅白戦やオープン戦で結果を出していかないとズルズルと行ってしまう。そこが勝負だと思っていますので、肝に銘じてやっていきたいと思います。毎年、成長してきていますので、その成長をプラスに変えたい」。今年こそ、勝利に貢献して歓喜の輪に加わるつもりだ。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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