高橋光成はなぜロン毛に? 大事な真意…広報が語る「セルフブランディング」の重要性

西武・広報部長の赤坂修平さん【写真:PLM提供】
西武・広報部長の赤坂修平さん【写真:PLM提供】

西武の広報部長・赤坂修平さんが語る広報の仕事

 メディアが球団と対峙する時に必ず会話することになるのが広報部だ。我々にとっては一番身近な“球団の方々”であり、選手取材ともなれば快く調整役を担ってくれる頼もしい協力者だ。2023年シーズン、12球団中最も多忙な広報部といえば西武だろう。新監督による新体制発足から始まり、WBCへの選手派遣、山川穂高内野手(現ソフトバンク)の騒動、オフシーズンの選手のメディア露出、FA宣言&人的補償……。これらの陣頭指揮を取ったのは、大手企業の広報で約20年、プロ野球広報としては1年目だった広報部長・赤坂修平さんだ。そんな彼の人柄に迫った。

 赤坂さんのキャリアは、広報の王道、かつエリートルートだ。2000年に、当時西武グループの持ち株会社だった株式会社コクド(現株式会社プリンスホテル)に入社した赤坂さんは、法人利用誘致の営業を4年間担った後に広報室に配属となった。主にリゾートエリアのプリンスホテルの広報として、苗場や軽井沢、箱根のプリンスホテルなどの取材誘致などを行っていたが、ここで営業時代の経験が生きた。

「苗場スキー場のゲレンデオープンの日には、自分で写真を撮り、記事を書くこともありました。距離があるのでなかなか苗場まで来ていただけないこともあったので、現地(苗場)から東京に戻ってきて、新聞社などに紙焼きした写真と記事を持ち込む際に、記事にしてほしくて苗場の雪と『エチゴビール』も一緒に持参したんです」

 どうにか爪痕を残せるようにという一心だった。「ちょっとだけ人の期待値を超えるという点では、営業と広報はすごく似ているんだなと思いました」と当時を振り返る。

 試練もあった。結果としてはプロ野球と赤坂さんのキャリアが交わるきっかけでもあったのだが、約20年前のプロ野球1リーグ制構想の騒動は忘れ難いという。当時のコクド会長・堤義明氏による「もう1組の合併の話が進行中である」との発言が話題を呼び、新米広報の赤坂さんは相当数のマスメディアの交通整理を担ったのだ。そこで取材を頑張って誘致していたこれまでの経験と比べて、プロ野球に対する世間の関心の高さを知った。

 だがこうした厳しい経験は無駄ではなかったと赤坂さんは話す。球団広報でも想定外の案件や初期対応に対する瞬発力を求められる案件は少なくない。「平時の仕事のスピード感、安定性を意識するようにしています。広報は当然、急場や危機に強くなければいけませんが、危機ばかりに対応している会社はありません。平常時に『どれだけ足腰を強くできるか』というのは大切で、だからこそ急場への耐性もつくと思っています」と語る。

2023年に西武の広報部長に着任…感じたプロ野球の熱「ちょっとした発言でも露出がある」

 2023年の1月に西武の広報部長として着任。早1年が過ぎた。これまでのキャリアで広報してきた商材はホテル・鉄道・不動産と“モノ”だったが、プロ野球は選手であり“人”が主体となる。「ひとりの選手のちょっとした発言でも露出がある。その辺りの影響力はすごいなと思います」と前職とのギャップは感じつつも、広報は業界が変わってもやりやすい仕事ではあると赤坂さんは言う。

「扱う商材が変わるだけで、コミュニケーションの仕方や、相手の期待を超えていくという行為についても変わりがないからです。もちろん、業界の情報や商習慣は変わるため、そこをキャッチアップしていくことにはなりますが、どこの業界にいても、素地さえあれば活躍できると思います」

 プロ野球の「広報」とは、広報と球団のさまざまな事業の情報を発信したりメディア対応を行う「事業広報」と、チームに帯同して試合中の選手のコメント取りや取材調整などを行う「チーム広報」があるが、赤坂さんいわく西武にはそこの垣根があまりないのが特徴だ。

「広報の視点で見れば、球団・チーム・選手はすべてPRし、守らなければいけない存在です。そういったなかで、担当する分野ではっきりと区切ることのメリットはあまりないのかなと。事業広報であっても、選手とコミュニケーションをとらなければ、メディアの皆さんにとって有益なネタ、ちょっとした小噺も提供できないので、積極的に関わりあうようにしてもらっています。人となりを見てもらわなければ、相手も心を開いてくれませんので。たとえば、外崎修汰選手や佐藤龍世選手と話をした際は、インボイス制度の説明をきっかけに親しくなれました(笑)。選手が興味を持っていることについて話すことで、私自身のパーソナルな部分も知ってもらえて相互理解が深まったと思います」

松井稼頭央監督に刺激…「筋肉を見て格好いいなと思った」

 広報と選手。互いに歩んできたキャリアは異なるが、知らない側面を伝え合うことで、双方が新しい知識をインプットできている。そしてそのコミュニケーションの積み重ねが円滑な仕事にもつながる。赤坂さんもプロ野球選手のトレーニングや身体のメンテナンスを見て興味が湧き、「この仕事に就いてからジムに通い始めました。自分より2歳年上の松井稼頭央監督の筋肉を見て格好いいなと思ったんです(笑)」と私生活でも刺激を受けている。

 平均年齢36.8歳、9人(赤坂さん除く)の広報部員たちは「やることはたくさんあるけれど、率先して動いてくれる気持ちのいいメンバー」だというが、人員不足が目下の悩みだ。“攻め”の広報姿勢を貫くために、経験ある広報担当者の確保が最優先課題だと赤坂さんは話す。

「これまでの仕事は、メディアが取材に来る環境を活用し、しっかり露出をしてもらうことが多く、スポーツメディア以外のメディアに対しては提案をあまりできていなかった状況で、基本的には“受け”の姿勢だったんです。でも今は、狙いたい媒体をリストアップしてアプローチしていくことをやり始めました。野球ファンを増やすためには、今まで野球に接点がない人たちに野球の要素を感じてもらうことが大事。たとえば、肌がきれいな源田壮亮選手を美容雑誌に売り込んだりもしました」

 逆にライオンズ広報部や赤坂さんの指針とマッチしないと思われる人もいるという。

「取材制限がまかり通ってしまう野球界に浸かっていると、ペンは剣よりも強いことを忘れがち。メディアの方よりも自分たちが偉いという感覚を持ってしまうと、危機の時に仕返しされる可能性もありますし、会社を守れません。『取材させてあげるよ』という感覚の人は、マッチしないのでは」

大事なセルフブランディング…高橋光成のロン毛を「私たちがサポート」

 今年からチャレンジしていきたいこと。それはタレント揃いの選手たちの見せ方・見られ方を一緒に考えていくことだという。

「アスリートにもタレントの側面があるので、広報にとって、その部分のマネジメントはすごく重要です。チーム広報も事業広報も、選手のセルフブランディングに寄与しなければならないし、将来のイメージ、野球の後のキャリア形成を一緒につくっていくことは広報にしかできない仕事だと思います。昨年、選手たちには、セルフブランディングの重要性を話しました。できる人間は、セルフブランディングがしっかりしている。栗山巧選手や源田壮亮選手はそういったことが上手だと感じます」

 選手を前にこうした話をしたときに、反応が大きかったのは高橋光成投手だった。

「高橋光成投手の昨今のロン毛スタイルは、野球を身近に感じてほしいという思いからだったようですが、単純に『髪の毛が長い選手』だけではセルフブランディングにはならないのです。なぜ髪の毛が長いのか、その理由を埋めていくことが大切だと話しました。野球界の慣習を守りたい人と変えたい人がいる事実に、『なぜ高橋光成は髪を伸ばすのか?』という本人なりの意見を取り込んで、ライオンズのエースとして発信していくというようなセルフブランディングを、私たちがサポートしていけるのではと思います」

 また、パブリシティだけではなく、各メディアとの連動が大事になってくる。

「ファンに対して情報を提供し、そこに反響がある。それをさらにマスコミが取材をして記事になり、より一般の人に広がっていく。拡散されたものを見て、『野球っておもしろそう』と機運が高まったところに、ペイドメディアがタイミングよく現れると、情報をキャッチアップしてから行動に移すまでの行為が連動してきます」

 業務の範囲も拡大され、企画力や感性も磨かなければ務まらない仕事だ。ただ他業界で経験がある人にとっては個人の裁量が大きい西武の広報の仕事は、“チームを支える裏方仕事”というだけでなく、チームや選手が成長していく過程を一緒に考え実行していくというチームビルド的な楽しみ、やりがいもあるだろう。赤坂さんの話からは、リーグでも有数の老舗企業でありながらベンチャースピリットを感じられた。西武ファンにとってチームの勝利が気になることは言うまでもないが、今後はこうした広報発信の情報や選手発信のちょっとした変化にもぜひ目を向けてもらいたい。

(「パ・リーグ インサイト」海老原悠)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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