被災地に「勇気を」 冷蔵庫は「お茶と水」だけ…内藤鵬が封印した“ピノ”に深い理由

オリックス・内藤鵬【写真:北野正樹】
オリックス・内藤鵬【写真:北野正樹】

オリックス・内藤鵬がアイスクリームを封印する理由

 本塁打への強い思いが自身を突き動かす。高卒プロ2年目を迎えるオリックスの内藤鵬内野手が、第二の故郷・石川県を襲った能登半島地震の被災者を勇気づけるため、大好きなアイスクリームを断ち「プロ初本塁打」を目標に掲げる。

「本塁打など、長打力には自信があります。みなさん期待してくださっていると思いますので、持ち味を出していきたいと思います。(被災地へは)僕が活躍することで、勇気を届けられればなと。1軍で本塁打を打つまで大好きなアイスクリームは食べません」

 内藤は、今も避難所などで厳しい生活を強いられている被災者に、思いをはせた。今年1月1日に発生した地震により、高校時代に3年間を過ごした日本航空高校石川がある輪島市などが甚大な被害を受けた。実家のある愛知県内で地震に遭い、すぐさま後輩らの無事を電話で確認。救援物資を届けたい気持ちを抑えて、自主トレに打ち込んだ。

 高校通算53本塁打の長距離砲として、2022年ドラフト2位でオリックスに入団。昨年の春季宮崎キャンプでは途中からA組に抜擢され、長打力と堅実な守備で、将来の4番候補として首脳陣から高い評価を受けた。しかし、5月5日のウエスタン・リーグ、阪神戦(甲子園)で、走者として野手と交錯し、左膝半月板を損傷。手術を受け復帰まで約5か月を費やした。

「昨年は怪我をして、何もできませんでした。怪我なく1年間、野球をプレーし続けることを前提に、1軍で活躍できるように課題をクリアしていきたいです」。内藤が今季目指すのは、パワー強化と体のキレの両立だ。リハビリ期間中は走ることができなかったため、パワー重視のトレーニングに明け暮れた。足を使った動きができるようになったことで、今はキレを求めてランニングメニューを多く取り入れ、体を絞っている。

絞った体で被災地に明るい話題を

 キレを出すため、体重管理にも意識が高まった。シーズンオフを迎える時に103キロあった体重を、97、98キロに絞った。食生活も大きく変わった。白米は夕食時におにぎり1個のみ。寮の食堂では、カロリー表示を参考に低脂肪、高たんぱくの食事を心掛ける。育ち盛りの19歳が「おにぎり1個」では、お腹が減りそうだが「夜の7時から1時間半くらい打撃練習をするので、集中していたら忘れます。練習しているとお腹が減らないタイプなんです」と屈託のない笑顔で語る。

 たくさん食べるだけでなく、大のアイスクリーム好きだった。「PARM(パルム)やブラックサンダーアイスも好きですが、イチオシは『ピノ』ですね。口の中で溶けていくのが美味しくて、食べ出したら止まりません……」と話すが、今、自室の冷蔵庫に入っているのは、お茶と水だけ。「お腹が減ったら、水分でごまかします……」と決意は固い。

 親交が深く、LINEで連絡を取り合う巨人・浅野翔吾外野手への思いも強い。「同学年ですからね。1軍で本塁打も打っていますし、そこは負けられないですね。それ以上の活躍をしたいと思います」。失意の1年目の悔しさを晴らし、被災地に明るい話題を伝えるためにも、絞った体でバットを振り抜く。

◯北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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