「風呂場で見た時は衝撃」後輩が語る“超人の真実” 消えない電気…全ての誘い断り変貌

阪神在籍時の糸井嘉男氏【写真:荒川祐史】
阪神在籍時の糸井嘉男氏【写真:荒川祐史】

元日本ハムの鎌倉健氏は投手時代の糸井嘉男と公私にわたり濃厚な時間を過ごす

 元日本ハムの鎌倉健氏は現在、兵庫・ヤングリーグ「東加古川レッドアローズ」の監督として、後進の育成に力を注いでいる。プロ野球人生は5年間ながら、現役時代は通算1755安打を放った糸井嘉男氏ら、覚醒間近の選手たちと時間を共にした。今でも思い出に残っているのは「超人の変化」だという。

 2003年のドラフトで自由枠として入団した糸井氏とは公私にわたり濃密な時間を過ごしたという。入団から2年間は投手としてプレーしていた右腕を「球は速いけどコントロールは悪かったですね(笑)」と振り返る。ただ、練習で見せる身体能力は群を抜いていた。ポール間を走れば野手も追いつくことができないスピード、イースタン・リーグで打席に立つと、打撃練習をしていないのにもかかわらず打球はピンポン玉のように飛んで行った。

「一歩の幅も大きくて、スピードもある。僕らは豹って呼んでました。入ってきた当初からボディービルダーのようなバキバキの体。肩甲骨をほぐすストレッチをすると、ボコって飛び出て羽が生えるんです。柔軟性もあって。初めて風呂場で見た時は衝撃でした」

 糸井氏といえば破天荒な発言、行動でファンを沸かせた“超人伝説”も有名だ。「今もTVとかで話していますが、楽しい思い出はたくさんあります」と笑う。仲間と一緒に量販店でホラーのお面を購入し、こっそり糸井氏の部屋の窓から覗かせると飛び上がって驚き「それ以来、部屋の電気とTVはつけっぱなし。めちゃくちゃ怖がりで、誰かの部屋で寝ることもありましたね」と振り返る。

 純粋な一面もあった。寮の部屋で野球漫画「MAJOR」のDVDを鑑賞。主人公の父親が亡くなった場面を2人で見ていると、隣でシクシクと涙を逃す糸井氏の姿が――。「『なに泣いているんですか?』って思わずツッコみました(笑)。感情移入する純粋な人なんだと分かりました」。2人で愛車のセルシオを洗車し、食事にも出かけるなど常に行動を共にしていた。

 転機となったのは2006年、糸井氏が野手に転向した時だ。これまでの誘いを全て断り、一心不乱にバットを振り続けていたという。昼夜問わず猛練習に打ち込む姿に「あの糸井さんが…。本当に別人のようだった。夜中も室内練習場は明かりがついてました」と、打者として覚醒していく姿を目の当たりにした。

 公私で仲良くしてもらった先輩から、球界トップクラスの打者への変貌。プロ野球の世界で学んだことは、今も指導の根底として生きている。「本当に楽しかったです。侍ジャパンにも選ばれて、球界を代表する選手になり引退後も活躍している。子どもたちにも『こんな凄い人がいるんだよ』と伝えたい」。超人と過ごした日々は今も鎌倉氏の財産になっている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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