41歳比嘉幹貴が目指す「普通」の姿 後輩は感銘…「ニーニー」が慕われる深い理由

オリックス・比嘉幹貴【写真:小林靖】
オリックス・比嘉幹貴【写真:小林靖】

オリックス・比嘉幹貴が「ニーニー」と慕われる理由

 蝶のように舞い、蜂のように刺す――。オリックスの救援陣を支える比嘉幹貴投手の形容詞である。走者を背負ったピンチの場面でマウンドに現れ、サイドハンドから体をしならせてストレートやスライダーで打たせてアウトを取る。

 さらには、絶妙のタイミングで一塁走者をけん制で刺し颯爽とマウンドを去る。先発投手らのアクシデントにも、わずか数球で肩を作り緊急登板するなど、何度もチームを救ってきた。そんな比嘉の愛称は「ニーニー」。沖縄の方言で「お兄さん」を指す言葉で、監督やコーチも親しみを込めて愛称で呼ぶ。

 2023年12月7日に41歳を迎えたチーム最年長右腕は、3月8日に40歳を迎える平野佳寿投手とともに、ナインから尊敬され、憧れられる存在だ。選手会副会長の阿部翔太投手は比嘉について「1番すごいなと思うのは、怪我をしている時や調子が悪い時だけでなく、打たれようが、その日の朝にファーム行きを言われようが、毎日ずっと同じことをやり続けられるんですよ。変わらず自分のやるべきことをずっと。絶対にやることがブレないんです」とリスペクトする。さらに「比嘉さんには言いませんが、僕は尊敬しています」と笑顔を見せるほどだ。

 育成5年目の佐藤一磨投手は「プロに入って思うことは、長く活躍される方はファンに愛されるだけではなく、比嘉さんや平野さんのように人間的にも素晴らしく、選手の間でも尊敬されていることです。技術だけでない人間力も見習っていきたいです」と明かす。

 そんな後輩たちの声に、比嘉は「どんな時も『普通に』という感じです。腐っても何にも変わらないんでね。やることは変わらないという感じです」と自然体を貫く。ただ「腐っている姿を見せたくないというのはあります。プロに入ってそういう人を見たことがあって『カッコ悪いな』というのがずっと残っていて。だからどんな状況でも、怪我をしていても、何か月も投げることができないと分かっていても、リハビリやトレーニングなどを変わらずやり続けます。別にアピールしているわけでもないですけど、なんかカッコ悪いなというのがあって、そういう態度はしないでおこうと決めています」と力説する。

「周りの方がチームを引っ張っているとおっしゃって下さるのですが、僕にはそんな意識はありません。チームを引っ張るぞとか、年上だからといってそんな感じはないですね。チームの雰囲気を良くすることで、状態を良くしてというのはあります。あとは……。とっつきにくい先輩にはなりたくないと思ってやっています」

42歳になっても「もう1回、40、50試合は投げたい」

 マウンド上のパフォーマンスだけでなく、若い選手が多いブルペン陣に準備の大切さを説くなど、リーグ4連覇に欠かせない重要なピース。それでも「(昨年は)ファームに落ちる時もあったし、個人的にはもっとできたかなと思う、反省の1年でした」と自己採点は厳しい。

 例年、キャンプ初日から入るブルペン投球を、今年は第2クール初日の2月6日に遅らせた。「天気が最初の3日間は悪かったのと、いつもキャンプ途中でちょっと疲れたりするので、抑え気味にやっています。最近は(登板数が)30試合ばっかりなので、もう1回、40、50試合は投げたいと思っています」。ベテランになっても「まだまだ、伸びしろはあります。もっと早い球も投げたい」と意気込むプロ15年目。1年間、1軍のマウンドで華麗に舞い続ける。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY