2軍で打率1割台&HRゼロ…1年目で味わった“現実” 焦る19歳に新井監督がかけた言葉

キャンプで練習に励む広島・内田湘大【写真:真田一平】
キャンプで練習に励む広島・内田湘大【写真:真田一平】

1年目は本塁打0も…“未来の大砲”広島・内田湘大にかかる期待

 プロの厳しさを味わった1年だった。2022年ドラフト2位で広島に入団した内田湘大内野手は昨年、持ち味の長打を発揮できず2軍の公式戦を終えた。宮崎・日南キャンプが行われている天福球場では、悔しさを胸に懸命にバットを振り込む姿があった。

 昨年は新人ながら開幕から2軍で出場機会を与えられ、チーム2位の87試合に出場した。放った安打は40本で打率.163。期待された本塁打は1本も打つことができなかった。「正直、焦りはありました。結果を残そうとするあまり、打席でいろんなことを考えてバットが振れなくなっていることもありました」と1年目の苦悩を振り返る。

 高校時代から常に長打を意識してきた。高校通算36本塁打を放った内田に、球団も未来の大砲候補として期待をかけた。新井貴浩監督は「たとえ100タコしてもいいから思い切り振ることを忘れないように」とアドバイスを送り、内田はその言葉を胸に打席に立ち続けた。ただ、チャンスを与えてもらいながら結果が残せない日々に、焦りは深まっていった。

 2年目のキャンプを迎える内田に新井監督はこう言葉をかけたという。「焦らなくていい」。

 結果を求めるあまり思い切りの良さが影を潜めていた内田に、1年目に送ったアドバイスを思い出してほしかったのかもしれない。結果よりも内容。新井監督からの言葉を胸に秘め、もう一度、理想の打撃を追い求めた。

フェニックス・リーグで放った一発「自分のスイングができた」

 1年目の反省を踏まえ、2年目の今季はシンプルにバットを振ることを心がける。「打席で力んでしまっていたので、試合ではできるだけ考えないようにするために、無駄を省くよう練習から取り組んでいます」。プロ入り以降、トレーニングの効果もあり、下半身は一回り大きくなった。安定した下半身を活かすためには、上半身のリラックスが必要になる。

「監督から言われた『焦らなくていい』の言葉はそのまま受け取ってはいけないと考えています。1年目とは変わったところを見せないといけないと思っています」と指揮官から送られた言葉の意味を何度も反芻し、キャンプを過ごしている。

 2軍の公式戦では本塁打0に終わったが、内田の1年目には続きがある。シーズン終了後の10月に行われたフェニックス・リーグでのヤクルト戦で一発を放った。「あの打席は本塁打にこだわっていませんでした。自分のスイングができて、結果的に本塁打を打つことができました」。場所はキャンプ地となっている天福球場。その感触はいまも手に残っている。

 1年目は246打数40安打。すでに100タコは超えているが、求められているのは目先の結果ではなく、見る者の心を奪うような一打。「同学年で1軍にいる選手もいる。負けないようにやっていかないといけません」。自らを奮い立たせた19歳は、2年目の飛躍を目指し鍛錬を重ねていく。

(真田一平 / Ippei Sanada)

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