リスク覚悟で“自己都合休職” 藤浪から「一緒に行かへん?」…海を渡ったアナの決意

オリオールズ時代の藤浪晋太郎(左)と服部優陽アナウンサー【写真提供:関西テレビ服部優陽アナウンサー】
オリオールズ時代の藤浪晋太郎(左)と服部優陽アナウンサー【写真提供:関西テレビ服部優陽アナウンサー】

関西テレビの服部優陽アナが見た、藤浪晋太郎の“1年目”

 どうしても見たかった景色を、目に焼き付けた。オリオールズからフリーエージェント(FA)となり、14日(日本時間15日)にメッツと正式契約を交わした藤浪晋太郎投手。阪神在籍時から親交の深い関西テレビの服部優陽アナウンサーは、本業を“休職”してメジャー1年目の昨季の躍動を見届けた。

 決意は固かった。服部アナは2023年4月上旬から11月まで「藤浪を追いかけるため」に休職した。理由は2つある。1つ目は「ずっと追いかけてきた存在だったので、1人の友人として『今、何をしているのか』がわからなくなるのが少し寂しかった」ことだと語る。

 2つ目は「誰も追いかける人がいないんじゃないかなと。もし、僕が行かなければ、メジャー1年目は『闇の中』にあるまま。彼が何を考えているのか、どういう心境だったのか。それがずっとわからないことになると、とてももったいないと思いました」と説明する。

 ただ、そんな簡単に海を渡ることはできなかった。アナウンサーとして任されていた業務もあったため「穴」を空けると周囲に迷惑が掛かる。「最初はもう、自分だけの『わがまま』じゃないかと思っていました。会社に迷惑が掛かりますし、何より『自分が追いかけたいだけ』でした」。会社の仲間を説得するうちに、気がついた。

「これは社会的に意義もあるんじゃないかと思えたんです。阪神にいた頃は、2軍戦の中継でも(活躍が)確認できていた。でも、関西圏では注目度の高い選手ですけど、アメリカに行けば報道量が露骨に落ちる。今までのメジャーリーガーとは少し違う形でチャレンジしていたので。彼の場合は、どこの媒体も密着に(人を)さけるほどのキャリアではなかったんです。だから、リスクは高いとは思っていましたけど、僕も挑戦してみたかったんです」

藤浪から伝えられた「一緒に1年行こうよ」のメッセージ

 きっかけは3年前。2021年のシーズンオフに「藤浪から『メジャーに行きたい』と思っていると聞いて。その時に『一緒に行かへんか?』と。同時にすごくワクワクして、面白いなと。アメリカで1年暮らすことは経験したことなかったので」。エキサイトしたものの、悩みは深かった。

「世間からしても(阪神の)2軍でもがいてるピッチャーがメジャーに行きたいと。最初は誰も信じてくれなかった。でも、僕は本気でした。背中を押してくれた仲間が方法を探ってくれた結果『自己都合休職』を選択したんです。結局、バタバタとご迷惑をおかけしてしまいましたが、結果的にこうして彼のことについて取材を受けさせてもらえたり、発信できるのであれば、意味のあることだよなと思えるようになりました」

 2022年オフにポスティングシステムを行使して、アスレチックスに入団。藤浪が「一緒に1年行こうよ」と言ってくれた。「海の向こうに渡ってしまえば、試合結果以外の部分が何もわからなくなってしまう。毎回、LINEをするのも違うなと思っていました。それで『行くしかないな』と。会社を休める人も、正直なところいないので、会社には感謝しかないです」。勇気を振り絞った決断が、多くの経験を生むことになった。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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