戦力外にされ「見返したい」 古巣指揮官が「まさか」…巨人で果たした“リベンジ”

横浜、西武などでプレーした石井義人氏【写真:湯浅大】
横浜、西武などでプレーした石井義人氏【写真:湯浅大】

トライアウトで巨人入りの石井義人氏は古巣・西武戦でスクイズを決めた

 横浜、西武などでプレーした石井義人氏は、トライアウトを経て2012年に巨人に入団した。交流戦で古巣を見返す“一打”の裏にあった驚きの真実や、ユニホームを脱ぐと決めた時の胸中を明かした。

「巨人はそれまでの2球団とは違った緊張感はあったと思います。やはり勝たないといけないチームなので。でも想像していたより選手の雰囲気は良かったですが、一流の選手ばかりなのでスタメンは無理。1軍にいるためには代打で生き残るしかないと思っていました」

 巨人在籍時のハイライトは加入1年目の2012年5月23日の古巣・西武戦で訪れた。1-0の8回1死三塁、代打で登場し、カウント1-1からの3球目。岸孝之投手が投じた外角への球に左打席の石井氏はバットを寝かせた。やや強い当たりのゴロは前進して突っ込む岸の左横を抜けた。巨人で初打点となるセーフティスクイズを成功させ、チームの勝利に貢献した。

「代打で行くとは言われていたけど、ヒッティングだと思っていたから、まさかだよね。サイン見て『え?』って。バクバクです。バントは苦手で、何度も失敗してきたから」

 左手で叩きつけるように決めた殊勲打。自身は安堵し、仲間は大喜びも「実はサインミスだったんです」と明かした。ベンチに戻ると三塁走者だった鈴木尚広外野手からセーフティではなく、“普通”のスクイズだったと知らされた

「『マジで!?』ってなりました。でも、普通のスクイズだったら失敗していたと思います。岸も結構チャージしてきたし。自分も硬くなって、三塁側に転がそうとしたらフライが上がっていたと思う。サインミスしたから決まったバントだと思います」

「石井義人Baseball School」を開き子どもたちと触れ合っている石井義人氏【写真:湯浅大】
「石井義人Baseball School」を開き子どもたちと触れ合っている石井義人氏【写真:湯浅大】

西武・渡辺監督から「まさかスクイズと思わなかったよ」

 翌日の試合前練習で西武側に挨拶に行くと渡辺久信監督から「まさかスクイズと思わなかったよ」と言葉をかけられた。「見返せた、と思いました。西武をクビになった時から、どこの球団に行くことになっても見返したいと思っていた。オープン戦でもヒットを打ったので、まだやれる、ということを見せられたんじゃないかな」。

 劇的なスクイズを機に打撃は上向きとなり、この年は代打で37打数15安打、打率.405という驚異的な数字を残した。だが、持病の腰痛もあり2013年は62試合で打率.203、2014年はわずか7試合の出場に終わり、戦力外となった。

「最後の2年間は年齢のせいか動体視力が落ちていました。捉えたつもりの球がバットの上を通過していく。2軍で若手からアドバイスを求められることも増えて、その子らが結果を出すことが嬉しくなった。教える楽しさが上回ってしまった。選手として燃え尽きたんだと思います」

 現役を引退し、ルートインBCリーグの埼玉武蔵や山形・佐藤病院の軟式野球チーム、女子プロ野球で指導者を務めた。その後、トラックの運転手として働いたが「やっぱり野球に携わりたくて」と2022年6月から埼玉・越谷市内で「石井義人Baseball School」(

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